警察庁によると、ランサムウェアの被害報告件数は2020年下半期の21件から2025年下半期は110件と、5年で約5.2倍になった。2022年上期に114件へ達して以降、8期連続で90件を下回っていない。2025年の年間報告は226件で、うち中小企業が143件(約63%)、業種別最多は製造業の91件だった。
調査概要
警察庁に報告されたランサムウェア被害は、2020年下半期の21件から2025年下半期は110件と、5年で約5.2倍になった。注目すべきは急増そのものより、その後の形だ。2022年上期に114件へ達して以降、8期連続で90件を下回っていない。2025年の年間報告件数は226件で、警察庁は「依然として高水準で推移している」としている。
半期ごとの数字は103件、94件と沈む期もあるが、翌期には再び110件台に戻る。「流行が去った」と読める区間は、この5年のどこにもない。
立ち上がりの速さも記録しておきたい。2020年下半期に21件だった被害報告は、翌年に61件・85件と増え、2022年上半期には114件——1年半で約5.4倍になった。
そしてグラフ①で見たとおり、この水準がその後4年間続いている。急増は2022年で「終わった」が、高止まりは今も「終わっていない」。
この件数は、都道府県警察を通じて警察庁に報告されたランサムウェア被害の件数であり、国内で発生した被害すべてを網羅する悉皆調査ではない。一方で、同一の集計方法で5年間続いている系列のため、水準そのものより「推移の形」を読むのに適したデータである。なお民間調査(JIPDEC・企業IT利活用動向調査2026)では、感染被害を経験したことがある企業は回答企業の45.8%にのぼり、警察への報告件数とは別の景色を示している。
令和7年の被害報告226件を規模別に見ると、中小企業が143件と約63%を占める。警察庁の報告書も「前年と同様に中小企業が約6割を占めている」と明記しており、この構図は1年で変わっていない。業種別では製造業が91件と最多で全体の約4割。卸売・小売業、サービス業、情報通信業と続くが、様々な業種で被害が確認されている。
被害後の負担も軽くない。同報告書によると、復旧に総額1,000万円以上を要した組織の割合は全体の5割を超え、1か月未満で復旧した組織は5割強にとどまる。
「中小企業が63%」という数字は、中小企業のほうが危険であることを直接示すものではない。日本の企業数は中小企業が大多数を占めるため、件数の内訳が中小に寄るのは自然でもある。この内訳から確実に言えるのは、「ランサムウェアは大企業だけを狙うもの」という前提が報告件数の実態と合っていない、ということだ。自社の規模を理由に対象外と考える根拠は、この数字の中にはない。
| 半期 | 被害報告件数 |
|---|---|
| 2020年下期 | 21件 |
| 2021年上期 | 61件 |
| 2021年下期 | 85件 |
| 2022年上期 | 114件 |
| 2022年下期 | 116件 |
| 2023年上期 | 103件 |
| 2023年下期 | 94件 |
| 2024年上期 | 114件 |
| 2024年下期 | 108件 |
| 2025年上期 | 116件 |
| 2025年下期 | 110件 |
※件数は都道府県警察から警察庁に報告された被害報告件数(悉皆調査ではない)。上期=1〜6月/下期=7〜12月。2025年の年間226件の規模別内訳は中小企業143件・大企業64件・団体等19件、業種別最多は製造業91件。
この系列は2022年上期からの8期、一度も90件を下回っていない。次回・令和8年版の公表(2027年3月頃見込み)での観測点は2つ。9期目もこの帯にとどまるのか、そして「中小企業が約6割」の構図が3年連続になるのか——を定点で確認する。
※出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年3月公表)図表6〜8。件数は都道府県警察から警察庁に報告されたランサムウェア被害の報告件数であり、国内の被害全体を網羅する悉皆調査ではない。上期は1〜6月、下期は7〜12月。規模別・業種別の内訳は令和7年(暦年)の226件のもの。復旧費用・復旧期間は被害組織へのアンケート結果(同報告書・統計編125〜126頁参照)。JIPDECの45.8%は「企業IT利活用動向調査2026」(n=1,107・2026年公表)による感染経験企業の割合で、警察庁の報告件数とは調査方法が異なる。
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