経済産業省・中小企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査によると、中小企業の価格転嫁率(コスト上昇分をどれだけ販売価格に反映できたか)は2023年9月の45.7%を底に改善し、2025年9月は53.5%。ただしコスト上昇分の半分弱は依然企業側が負担している。賃上げの原資である労務費の転嫁率は37.4%から50.0%へ最後発で追い上げ、2025年9月に初めて5割へ到達した。
調査概要
グラフ①:価格転嫁率の推移——2年半、5割前後で足踏み
毎年更新:この記事は「定点観測」シリーズです。統計の最新値が公表されるたびに、同じURLで更新します(最終更新:2026年7月)
中小企業の価格転嫁率(コスト上昇分をどれだけ販売価格に反映できたか)
2023年3月〜2025年9月(半期ごと・単位:%)|経済産業省・中小企業庁「価格交渉促進月間フォローアップ調査」(受注側中小企業への調査)
→ 45.7%(2023年9月)→53.5%(2025年9月)。長く5割前後で足踏みし、直近でようやく上抜けた
価格転嫁率とは、原材料費や人件費などのコスト上昇分を、どれだけ販売価格に反映(転嫁)できたかを示す割合だ。中小企業のこの率は、2023年からの2年半、45〜50%あたりで長く足踏みしてきた。2025年9月時点でようやく53.5%と5割を超えたが、それでも意味するのは「コスト上昇分の半分弱は、いまも企業が自ら飲み込んでいる」ということだ。
では、上昇したコストの中身によって転嫁の進み方に差はあるのか——次のグラフで、原材料費と労務費を分けて見る。
グラフ②:労務費 vs 原材料費——最後発の「労務費」がついに5割に
コスト要素別の価格転嫁率(労務費と原材料費)
2023年3月〜2025年9月(半期ごと・単位:%)|同一調査。労務費=人件費・賃金の上昇分
→ 労務費は37%→50%と最後発で追い上げ、2025年9月に初めて5割へ到達
コストの中身で分けると、転嫁のしやすさに差があることがわかる。原材料費の転嫁率は早くから5割前後で推移してきた。一方で労務費(=人件費・賃上げの原資)は2023年に37%台と最も低く、転嫁が難しいコストだった。それが少しずつ追い上げ、2025年9月に初めて50.0%に到達した。
賃上げが社会の常識になった数年間の裏で、その原資である人件費の転嫁は最後発で進んできた——というのが、この2本の線の意味である。
「価格転嫁率」の正確な意味——この数字が測っているもの
この価格転嫁率は「コスト上昇分を全額転嫁できた企業の割合」ではなく、コストの上昇分に対して、平均してどれだけの割合を価格に反映できたかを示す指標である。53.5%は「上昇分の約半分を転嫁できた」という意味であり、「半分の企業が転嫁できた」ではない。この2つは混同されやすいので、プレゼンで使うときは「全額転嫁できたか」と「上昇分の何割を転嫁できたか」を区別すると誤解がない。調査は毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に、受注側の中小企業に対して行われている。
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グラフ③:2025年9月の現在地——コスト要素別の転嫁率
コスト要素別の価格転嫁率(2025年9月)
2025年9月(単位:%)|同一調査。原材料費・労務費・エネルギーコストの3要素
→ 原材料費55.0%・労務費50.0%・エネルギー48.9%。労務費が初めて5割に到達
2025年9月の最新値を要素別に見ると、原材料費55.0%・労務費50.0%・エネルギーコスト48.9%だ。3要素とも、コスト上昇分の半分前後しか転嫁できていない。もっとも進んだ原材料費でも55%で、残り45%は企業側の負担にとどまっている。労務費が初めて5割に届いたことは前進だが、水準そのものは「ようやく半分」である。
このグラフの正しい読み方
数値は受注側の中小企業へのアンケート(2025年9月調査・回答約7万社)に基づく自己申告値である。取引の階層が深くなる(下請けの下請けになる)ほど転嫁率は下がる傾向があり、業種・都道府県によっても差が大きい。全体の平均値をそのまま個社に当てはめず、自社の取引構造とあわせて読むのが望ましい。
データ一覧:中小企業の価格転嫁率の推移(2023〜2025年・コスト要素別)
出典:経済産業省・中小企業庁 価格交渉促進月間フォローアップ調査
| 調査回 | 全体 | 労務費 | 原材料費 |
| 2023年3月 | 47.6% | 37.4% | 48.2% |
| 2023年9月 | 45.7% | 36.7% | 45.4% |
| 2024年3月 | 46.1% | 40.0% | 47.4% |
| 2024年9月 | 49.7% | 44.7% | 51.4% |
| 2025年3月 | 52.4% | 48.6% | 54.5% |
| 2025年9月 | 53.5% | 50.0% | 55.0% |
※価格転嫁率は、コストの上昇分に対して販売価格に転嫁できた割合の平均で、全額転嫁できた企業の割合ではない。毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に受注側中小企業へ実施(2025年9月調査は回答約7万社)。2025年9月のエネルギーコストの転嫁率は48.9%。
先を読む
2025年9月——価格転嫁率53.5%、労務費50.0%。半期ごとに緩やかな改善が続いている。
価格転嫁率はこの2年半、45.7%(2023年9月)を底に一貫して改善してきた。次回・2026年3月調査(例年5月頃公表)での観測点は2つ。改善傾向が続いて全体が55%を超えるか、そして最後発の労務費が5割を安定して上回るか——を定点で確認する。あわせて、下請取引の適正化に関する制度(中小受託取引適正化法など)の施行が、この数字にどう表れるかも見どころになる。
このデータをプレゼンで使うには
ターゲット:経営企画・調達・購買・営業・人事・取引適正化担当
SCENE 01|価格交渉の社内提案
「交渉は正当」という前提を数字で示す
「中小企業の価格転嫁率は、コスト上昇分の半分強の53.5%にとどまっています。国も価格交渉促進月間を設けて後押ししており、コスト上昇分の価格反映を求めることは、業界全体の当たり前になりつつあります。」
SCENE 02|賃上げ原資の議論
「賃上げと転嫁はセット」を可視化する
「賃上げの原資である労務費の転嫁率は、2025年にようやく50%に届きました。逆に言えば、人件費の上昇分の半分は企業が飲み込んでいます。賃上げを続けるには、労務費の価格交渉をセットで進める必要があります。」
SCENE 03|発注側・購買部門の意識づけ
「取引適正化」の文脈で共有する
「取引先の中小企業は、コスト上昇分の約半分を自ら負担している状況です。持続的な取引のためには、発注側からの価格交渉の申し入れや、労務費上昇分への理解が、これからのスタンダードになります。」
生成AIでグラフを生成する
以下のデータをもとに折れ線グラフを作成してください。
【データ】(単位:%・コスト上昇分に対する価格転嫁率)
調査回, 全体, 労務費, 原材料費
2023年3月, 47.6, 37.4, 48.2
2023年9月, 45.7, 36.7, 45.4
2024年3月, 46.1, 40.0, 47.4
… (2023〜2025年の全データ・グラフ仕様・出典・注記を含む全文)
📎 引用・転載について
本記事のグラフ・数値・データ表は、出典として本記事へのリンク(「出典:DataSlide」+記事URL)を明記いただければ、ブログ・資料・SNS等で自由に転載いただけます。事前連絡は不要です。
よくある質問
中小企業の価格転嫁率は何%ですか?
経済産業省・中小企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査によると、中小企業の価格転嫁率(コスト上昇分をどれだけ販売価格に反映できたか)は2025年9月時点で53.5%です。2023年9月の45.7%を底に緩やかに改善してきましたが、依然としてコスト上昇分の半分弱は企業側が負担している計算になります。なおこの数値は「全額転嫁できた企業の割合」ではなく、コスト上昇分に対して価格に反映できた割合の平均です。
労務費(人件費)の価格転嫁は進んでいますか?
最後発で進んでいます。賃上げの原資である労務費の転嫁率は、2023年3月に37.4%と3要素の中で最も低い水準でしたが、2025年9月に初めて50.0%へ到達しました。原材料費(55.0%)やエネルギーコスト(48.9%)と比べても追い上げが目立ちますが、それでもコスト上昇分の半分にとどまっています(経済産業省・中小企業庁 価格交渉促進月間フォローアップ調査)。
コスト要素によって価格転嫁のしやすさは違いますか?
違います。2025年9月時点の価格転嫁率は、原材料費55.0%・労務費50.0%・エネルギーコスト48.9%で、目に見える形(モノ)のコストである原材料費が最も転嫁しやすく、人件費である労務費は交渉の根拠を示しにくいため最後発でした。ただし3要素ともコスト上昇分の半分前後にとどまり、水準そのものは高くありません(経済産業省・中小企業庁 価格交渉促進月間フォローアップ調査)。