電子契約を利用する企業は2026年に80.2%と初めて8割を超えた。2018年の43.1%から9年で約37ポイント上昇し、うち24ポイントはコロナ禍の2021年の1年間に集中している(JIPDEC)。
調査概要
電子契約を利用する企業の割合は、2018年から2020年まで43〜44%で完全に横ばいだった。それが2026年には80.2%と初めて8割を超えた。9年間で約37ポイントの上昇——しかしそのうち24ポイントは、たった1年で動いている。
その1年が2021年だ。次のグラフで、9年間の変化のほとんどを生んだ急変点をズームインする。
2020年まで9年近く40%台前半で止まっていた利用率が、2021年に一気に67.2%へ跳ねた。テレワークが広がるなか「契約書に押印するためだけに出社する」ことが社会的な問題になり、政府の脱ハンコ方針がそれを後押しした。9年間の変化の3分の2が、この1年に凝縮されている。
電子契約のツール自体は2018年当時から存在し、利便性も変わらなかった。動かなかった理由は「今のやり方で困っていない」から。それを壊したのがコロナ禍という外圧である。テレワーク(2020年)・マイナカード(2023年)・生成AI(2025年)と同じく、企業の慣習は利便性ではなく「やらざるを得ない状況」によって変わる——定点観測シリーズで繰り返し確認されるパターンだ。
同じ2026年の調査の中に、対照的な2つの数字がある。契約業務は80.2%がデジタル化された一方、外部へのファイル送付では41.8%の企業がいまだにパスワード付きzipをメールに添付する方式(通称PPAP)を使い続けている。PPAPはセキュリティ効果が乏しいとして政府機関が廃止し、多くの大手企業も受信拒否を進めている方式だ。
契約が変わったのは「ハンコ出社」という外圧があったから。メール添付に同じ強さの外圧はまだかかっておらず、そこには古い慣習がそのまま残っている——企業のデジタル化は一枚岩ではなく、場所によってこれだけの凸凹がある。
2つの数字は「進んだ領域」と「残った領域」の対比である。電子契約が9年横ばいから一気に8割へ達した事実は、PPAPも「変わるきっかけさえあれば一気に変わり得る」ことを示唆する。取引先からの受信拒否や業界ガイドラインが外圧として機能し始めたとき、この41.8%が急落する——それが次の定点観測の見どころになる。
| 調査年(各年1月) | 電子契約利用率 |
|---|---|
| 2018年 | 43.1% |
| 2019年 | 44.2% |
| 2020年 | 43.3% |
| 2021年 | 67.2% |
| 2022年 | 69.7% |
| 2023年 | 73.9% |
| 2024年 | 77.9% |
| 2025年 | 78.3% |
| 2026年 | 80.2% |
※2018〜2020年は設問形式が旧版。パスワード付きzip添付(PPAP)をいまだ利用する企業は41.8%(2026年)。
直近3年の伸びは年1〜3ポイントまで鈍化しており、電子契約は80%台で飽和に向かうとみられる。残る2割は、取引先が紙を求める・業界慣習・小規模事業者との取引といった構造要因が中心で、ツールの問題ではない。今後の観測点はむしろPPAP側だ。「契約」で起きた急変が「メール添付」でも起きるのか——41.8%という数字の動きが、日本企業のデジタル化の次の局面を教えてくれる。
※出典:JIPDEC「企業IT利活用動向調査」各年版(2026年版は2026年4月15日公表・n=1,107・調査時期2026年1月)。2018〜2020年の値は当時の設問形式(N対N型+1対N型の合算)によるもので、2021年以降は簡略化された設問による同一指標。厳密な経年比較ではなく傾向の把握を目的とする。PPAP利用率(41.8%)は同調査2026のセキュリティ編より。
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