東京商工リサーチの集計によると、2025年の「人手不足」関連倒産は397件と過去最多で、2021年の56件から4年で約7倍に急増した。だが最新の最大要因は「求人難(採れない)」ではない。「人件費高騰(払えない)」を主因とする倒産が2022年の7件から2025年の152件へ3年で約22倍に膨らみ、求人難(135件)を抜いて主因に躍り出た。つまり、人手不足倒産をいちばん押し上げているのは、もはや人手不足そのもの(人を採れないこと)ではなく、上げた賃金を払えないことなのだ。
調査概要
グラフ①:人手不足倒産(合計)の推移——2021年の底から過去最多へ
毎年更新:この記事は「定点観測」シリーズです。統計の最新値が公表されるたびに、同じURLで更新します(最終更新:2026年7月)
「人手不足」関連倒産の件数(年次・合計)
2013年〜2025年(暦年・件)|東京商工リサーチ「『人手不足』関連倒産」(求人難・従業員退職・人件費高騰のいずれかを主因とする倒産)
→ 2021年の56件を底に、2025年は397件で過去最多。4年で約7倍に急増した
「人手不足」を理由とする倒産は、2019年に156件まで増えた後、コロナ下の資金繰り支援もあって2021年に56件まで落ち込んだ。しかしそこを底に一転して急増し、2023年159件、2024年292件、そして2025年は397件と過去最多を記録した。底からわずか4年で約7倍である。次に、この急増局面を切り取って勢いを確認する。
グラフ②:底からの急増——4年で約7倍
人手不足倒産(合計)のズームイン(2021→2023→2025年)
2021年〜2025年(単位:件/縦軸はグラフ①と同じ0〜400件)|同一集計・全国
→ 2021年56件→2025年397件。4年で+341件・約7倍。急増のスピードが際立つ
底だった2021年の56件から2025年の397件まで、人手不足倒産は4年で+341件・約7倍に膨らんだ。コロナ下の資金繰り支援が縮小するなかで、物価高・賃上げ・採用難という人にまつわるコストが一気に企業を圧迫したことがうかがえる。ただし「人手不足倒産」とひとくくりにされるこの数字は、実は性質の異なる3つの要因に分かれている。次に中身を分解して見る。
「人手不足倒産」とは——3つの要因の合計
ここでいう「人手不足」関連倒産は、東京商工リサーチが①求人難(必要な人員を採用できない)②従業員退職(人員が流出する)③人件費高騰(賃金・人件費の負担に耐えられない)のいずれかを主因とする倒産を集計したものだ。同じ「人手不足」でも、「採れない」のか「辞められる」のか「払えない」のかで意味は大きく異なる。次のグラフで、この3要因のどれが件数を押し上げているのかを見る。
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グラフ③:主因の交代——「採れない」から「払えない」へ
要因別の「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)
2013年〜2025年(単位:件/縦軸0〜160件・要因別のためグラフ①②とは別スケール)|同一集計・主因1つで分類
→ 人件費高騰が2022年7件→2025年152件と約22倍に急増し、2025年に求人難を抜いて主因に
中身を分解すると、主役の交代がはっきり見える。長く最大要因だったのは求人難(採れない)で、2024年も115件と首位だった。ところが人件費高騰(払えない)を主因とする倒産が2022年の7件から2025年の152件へと3年で約22倍に急増し、2025年に求人難(135件)を抜いて主因に躍り出た。従業員退職(辞められる)も110件まで増え、3要因がそろって過去最多水準にある。「人が採れないから潰れる」から「人件費を払えないから潰れる」へ——人手不足倒産の中身が変わったのだ。
このグラフの正しい読み方——「賃上げ疲れ」という新しい局面
人件費高騰が主因に立つということは、企業が直面する問題が「人を採れないこと」だけでなく、採用・定着のために上げた賃金の原資を確保できないことへと移りつつあることを示す。物価高と最低賃金・賃上げの流れのなかで、価格転嫁が追いつかない中小・零細企業ほど人件費の負担が重くのしかかる。求人難・従業員退職・人件費高騰はいずれも「人」をめぐる問題だが、対策は異なる。数字が過去最多というだけでなく、その内訳が「採れない」から「払えない」へ動いているという点にこそ、この統計の読みどころがある。
「人手不足」関連倒産の件数の推移(要因別・2013〜2025年・単位:件)
| 年 | 合計 | 求人難 | 従業員退職 | 人件費高騰 |
| 2013 | 37 | 11 | 18 | 8 |
| 2014 | 53 | 19 | 11 | 23 |
| 2015 | 61 | 25 | 14 | 22 |
| 2016 | 58 | 18 | 17 | 23 |
| 2017 | 68 | 35 | 18 | 15 |
| 2018 | 110 | 60 | 24 | 26 |
| 2019 | 156 | 78 | 44 | 34 |
| 2020 | 95 | 36 | 38 | 21 |
| 2021 | 56 | 20 | 26 | 10 |
| 2022 | 62 | 27 | 28 | 7 |
| 2023 | 159 | 58 | 42 | 59 |
| 2024 | 292 | 115 | 71 | 106 |
| 2025 | 397 | 135 | 110 | 152 |
出典:東京商工リサーチ「2025年『人手不足』関連倒産」(令和8年1月公表・負債1,000万円以上)。各要因は主因1つで分類し、合計=3要因の和。2015・2016年の従業員退職はグラフのラベル非表示につき「合計−求人難−人件費高騰」で算出した参考値。調査開始は2013年。2025年に人件費高騰(152件)が求人難(135件)を上回り主因となった。
先を読む
2025年——人手不足倒産397件・うち人件費高騰152件。主因は「採れない」から「払えない」へ。
人手不足倒産は4年連続で増え、2025年に過去最多の397件に達した。焦点は2つ。人件費高騰が主因の座に定着するのか、そして合計が年400件超の水準に乗るのか——を定点で追いたい。賃上げの流れが続く一方で価格転嫁が追いつかなければ、「人件費を払えない倒産」はさらに増える可能性がある。次回の年次確定値(例年1月公表)が最初の観測点になる。
このデータをプレゼンで使うには
ターゲット:経営企画・人事・労務・金融機関・事業再生/中小企業支援・採用/賃金設計担当
SCENE 01|経営会議・人件費計画
「人手不足=採用問題」ではないことを示す
「人手不足倒産は4年で約7倍の397件に増えました。ただし2025年の最大要因は求人難ではなく人件費高騰です。賃上げの原資を価格転嫁で確保できるか——採用力と同じくらい、賃金を払い続ける体力が問われる局面に入っています。」
SCENE 02|金融機関・中小企業支援
支援の重心の移動を共有する
「人件費高騰を主因とする倒産は2022年の7件から2025年は152件へ3年で約22倍です。支援のポイントは『人を採る手伝い』から『上げた賃金を支える収益構造・価格転嫁の後押し』へ移りつつあります。」
SCENE 03|人事・賃金制度設計
賃上げの持続可能性を論拠にする
「求人難・従業員退職・人件費高騰の3要因がそろって過去最多です。賃上げは採用・定着に不可欠ですが、原資の裏づけがなければ倒産要因に転じます。賃金水準と収益・価格転嫁をセットで設計することが、これからの前提になります。」
生成AIでグラフを生成する
以下のデータをもとに、要因別の折れ線グラフを作成してください。
【データ】(単位:件)
年, 求人難, 従業員退職, 人件費高騰
2013, 11, 18, 8
2014, 19, 11, 23
2015, 25, 14, 22
… (2013〜2025年の全データ・合計・グラフ仕様・出典・注記を含む全文)
📎 引用・転載について
本記事のグラフ・数値・データ表は、出典として本記事へのリンク(「出典:DataSlide」+記事URL)を明記いただければ、ブログ・資料・SNS等で自由に転載いただけます。事前連絡は不要です。
よくある質問
人手不足倒産は2025年に何件でしたか?
東京商工リサーチの集計によると、2025年の「人手不足」関連倒産は397件で過去最多でした。コロナ下の2021年(56件)を底に、2023年159件・2024年292件と増え続け、4年で約7倍になっています。「人手不足」関連倒産とは、求人難・従業員退職・人件費高騰のいずれかを主因とする、負債総額1,000万円以上の倒産を指します。
人手不足倒産の最大の原因は何ですか?
2025年の最大要因は「人件費高騰(賃上げの原資を払えない)」で152件でした。2022年の7件から3年で約22倍に増え、それまで最大だった「求人難(人を採れない)」の135件を初めて上回り主因になりました。従業員退職を主因とする倒産も110件で、3要因がそろって過去最多水準にあります。「人が採れないから潰れる」から「賃金を払えないから潰れる」への構造転換が起きています。
人件費高騰による倒産はどのくらい増えていますか?
人件費高騰を主因とする「人手不足」関連倒産は、2022年の7件から2025年は152件へと3年で約22倍に急増しました。求人難(135件)を上回り、2025年に初めて最大の要因になっています(東京商工リサーチ「2025年『人手不足』関連倒産」)。物価高と賃上げが続くなかで価格転嫁が追いつかない中小・零細企業ほど、人件費の負担が重くのしかかっています。