スマートフォンの世帯保有率は2025年に91.8%、パソコンは64.4%(総務省)。2017年に両者の順位が入れ替わり、差は27.4ポイントまで開いた。
調査概要
スマートフォンを保有する世帯は、2012年の49.5%から2025年には91.8%へと14年間でほぼ倍増した。前半(2012〜2019年)はほぼ一直線に伸び、2020年以降は9割前後の飽和圏に入っている。もはや「スマホがある家庭」は、電気や水道に近い前提条件になった。
この14年の上昇の裏側で、静かに下がり続けた端末がある。パソコンだ。2つの線が入れ替わった瞬間を、次のグラフで拡大する。
2016年まではパソコン(73.0%)がスマートフォン(71.8%)をわずかに上回っていた。それが2017年、スマートフォン75.1%・パソコン72.5%で順位が入れ替わった。以降、2本の線が再び交わることはなく、差は開き続けている。
劇的な事件があったわけではない。格安SIMの普及でスマホの保有コストが下がり、動画・決済・SNSと「スマホで足りる」用途が広がった一方、家庭でパソコンを開く理由が年々減っていった。テレワークや電子契約のような「外圧型」の急変ではなく、生活の重心が少しずつ移動して起きた「自然交代」である点が、このシリーズの他の記事との大きな違いだ。
14年をフルで重ねると、この交代が一時的な逆転ではないことがわかる。スマートフォンは+42.3ポイント、パソコンは−11.4ポイント。2017年の交代以降、差は毎年広がり続け、2025年には27.4ポイントに達した。パソコンは2013年の81.7%をピークに、12年かけて64.4%まで下がっている。
重要なのは、パソコンが「消えていく」わけではないことだ。3世帯に2世帯には今もPCがある。ただしその役割は「家庭の情報の入口」から「仕事・学習・制作のための道具」へ変わった。入口の座は、完全にスマートフォンへ移った。
2本の線は「普及」と「役割の縮小」を同時に描いている。BtoCのサービス設計で「まずPCサイトを作り、スマホ対応はその後」という発想は、この14年の推移と逆行している。一方でPC保有64.4%という数字は、確定申告・年末調整・オンライン手続きなど「たまの複雑な作業」の受け皿がまだ各家庭にあることも示す。設計の主役はスマホ、複雑な作業の逃げ道としてPC——この使い分けが現在の標準である。
| 年 | スマートフォン | パソコン |
|---|---|---|
| 2012年 | 49.5% | 75.8% |
| 2013年 | 62.6% | 81.7% |
| 2014年 | 64.2% | 78.0% |
| 2015年 | 72.0% | 76.8% |
| 2016年 | 71.8% | 73.0% |
| 2017年 | 75.1% | 72.5% |
| 2018年 | 79.2% | 74.0% |
| 2019年 | 83.4% | 69.1% |
| 2020年 | 86.8% | 70.1% |
| 2021年 | 88.6% | 69.8% |
| 2022年 | 90.1% | 69.0% |
| 2023年 | 90.6% | 65.3% |
| 2024年 | 90.5% | 66.4% |
| 2025年 | 91.8% | 64.4% |
※2017年にスマートフォンがパソコンを逆転。
スマートフォンは9割超で飽和しており、今後の変化は保有率ではなく「5G化・買い替えサイクル・スマホ完結できる手続きの範囲」に移る。注目はパソコンの下げ止まりだ。直近も低下傾向が続くが、テレワークと在宅学習がPCの最後の砦になっており、60%前後で下げ止まるのか、それとも割り込むのか——次回調査(2027年公表)の観測ポイントである。
※出典:総務省「通信利用動向調査」(世帯編)各年版。2025年の値は令和7年調査(2026年5月29日公表)。調査時点は各年8月末(一部年度は9月)。グラフ②のみ縦軸を60〜85%に拡大して表示している。
本記事のグラフ・数値・データ表は、出典として本記事へのリンク(「出典:DataSlide」+記事URL)を明記いただければ、ブログ・資料・SNS等で自由に転載いただけます。事前連絡は不要です。

