65歳以上の人に占める働いている人の割合(就業率)は、2025年に26.0%だった(総務省「労働力調査」)。「働く高齢者が増えた」とよく言われるが、2011年の19.2%を底にした回復であり、統計をさかのぼれる1968年は33.3%で、いまより高かった。高齢者が働く社会は新しく生まれたのではなく、いったん下がってから戻りつつある——就業率は57年かけてU字を描いている。ただし2025年の26.0%はまだ1968年の水準には届いていない。
調査概要
労働力調査は、毎月およそ4万世帯を対象に、働いているかどうかを調べている。65歳以上の就業率は、統計をさかのぼれる1968年に33.3%だった。その後は長く下がり続け、2005年に19.4%、東日本大震災のあった2011年には19.2%まで落ちた。40年あまりで14ポイント下げたことになる。
流れが変わったのはそこからで、2015年21.7%、2020年25.1%と持ち直し、2025年は26.0%まで戻った。2011年からの14年で6.8ポイントの回復である。「働く高齢者が増えた」という話は正しいが、ゼロから増えたのではなく、いったん下がった水準が戻ってきたという表現のほうが実態に近い。次のグラフで、いまの26.0%が過去と比べてどの位置にあるのかを見る。
同じ就業率を、節目の3つの年で並べると位置関係がはっきりする。いちばん高いのは現在ではなく1968年の33.3%である。いちばん低いのは2011年の19.2%。そして2025年は26.0%で、底からは戻したものの、1968年の水準まではまだ7.3ポイント足りない。
「高齢者がこれだけ働くのは前例のないことだ」という受け止めは、直近10年ほどの上昇だけを見た印象である。半世紀の物差しで見ると、いまの水準は過去にすでに経験した高さの内側にある。かつて高齢者の就業率が高かった背景には、自営業や農業に従事する人が多かったことがある。雇用者が中心の働き方に変わるなかで割合は下がり、近年ふたたび上がっている。
65歳以上の就業率が1968年に高かったのは、自営業・家族従業・農林業といった、定年のない働き方に就く人が多かったためとされる。高度成長を経て雇用者(会社などに雇われて働く人)が中心になると、定年で仕事を離れる人が増え、割合は2000年代にかけて下がった。そして近年は、年金の支給開始年齢の引き上げ、高年齢者雇用安定法による65歳までの雇用確保や70歳までの就業機会確保の努力義務、人手不足による高齢者の採用増などが重なり、ふたたび上昇に転じている。同じ「働く高齢者が多い」状態でも、1968年と2025年では、その中身(自営中心か、雇用中心か)が入れ替わっている点に注意したい。
U字の中身を男女で分けると、動きがまったく違う。男性の就業率は1968年に51.5%あり、2011年の27.5%まで大きく下げた。近年は回復して2025年で34.5%だが、1968年の水準には17ポイントも届いていない。U字が浅くしか戻っていないのは、主に男性側の事情である。
一方で女性は、1968年の18.8%から2005年の12.6%まで下げたあと、近年はっきりと上昇し、2024年に1968年の水準を超えて過去最高を更新、2025年は19.6%となった。男性が「昔の高さに戻る途中」なのに対し、女性はこれまでで最も働いている。同じ「働く高齢者」でも、男性は復調、女性は新記録という、逆向きの物語が重なっている。
これは「就業率」=割合の推移であり、働く高齢者の人数の推移ではない。高齢者人口そのものが1968年よりはるかに増えているため、就業率が当時より低くても、働く高齢者の実数はいまのほうが多い。割合が下がって上がったからといって、働く高齢者の頭数が減って増えたわけではない。また、2011年の値は東日本大震災の影響で一部の県の調査が難しかったため補完推計を用いており、他の年とは性質がやや異なる。それでも2005年(19.4%)とほぼ同じ低水準にあることは変わらず、2000年代半ばが底だったという構図は動かない。「高齢者はいまだかつてなく働いている」という言い方は、女性については当てはまるが、全体・男性については半世紀前のほうが高かった、というのが数字の姿である。
| 年 | 65歳以上・計(%) | 男性(%) | 女性(%) |
|---|---|---|---|
| 1968 | 33.3 | 51.5 | 18.8 |
| 1975 | 27.5 | 43.6 | 15.3 |
| 1985 | 23.9 | 36.2 | 15.4 |
| 1995 | 24.2 | 36.5 | 15.5 |
| 2005 | 19.4 | 28.7 | 12.6 |
| 2011 | 19.2 | 27.5 | 13.0 |
| 2015 | 21.7 | 30.3 | 15.0 |
| 2020 | 25.1 | 34.2 | 18.0 |
| 2023 | 25.2 | 34.0 | 18.5 |
| 2024 | 25.7 | 34.2 | 19.1 |
| 2025 | 26.0 | 34.5 | 19.6 |
出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」。就業率は65歳以上人口に占める就業者の割合。2025年値は「2025年(令和7年)平均結果の概要」(2026年1月30日公表)、長期の系列は労働力調査 長期時系列表(1968年〜)による。表に示したのは1990年代までが代表年、2005年以降が各年の値である(毎年の値は原典に収録されている)。2011年は東日本大震災の影響により補完推計値。1977年以前は時系列接続用の数値。実数は2020年国勢調査基準に遡及補正されている(比率は補正の対象外)。差分(ポイント)は公表値をもとに編集部が算出した。
働く高齢者は「増えている」と語られがちだが、割合で見れば、いまはかつて経験した高さへ戻る途中にある。全体は1968年の33.3%に7.3ポイント足りず、男性はさらに遠い。ただし女性はすでに過去最高を更新しており、この上昇がどこまで続くかが、全体のU字を1968年の水準まで押し上げられるかどうかを左右する。次に見るべき観測点は3つ。女性の就業率が20%を超えるのか。男性の回復が止まるのか続くのか。そして、70歳までの就業機会確保が広がるなかで、65〜69歳と70歳以上のどちらがけん引するのかである。2026年平均結果は2027年1月末ごろの公表が見込まれる。
※出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」。就業率は65歳以上人口に占める就業者の割合。2025年平均値は「2025年(令和7年)平均結果の概要」(2026年1月30日公表)、1968年以降の長期系列は労働力調査 長期時系列表による。2011年は東日本大震災の影響で岩手・宮城・福島県の調査が困難だったため補完推計値を用いており、他年と性質がやや異なる。1977年以前は時系列接続用の数値。就業率は「就業者数÷人口」の割合であり、働く高齢者の実数の推移とは異なる(高齢者人口の増加により、就業率が低くても実数はいまのほうが多い)。ポイント差・倍率は公表値をもとに編集部が算出した。
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