万引きの認知件数は2025年に10万5,135件となり、底だった2022年の8万3,598件から3年で2万1,537件(25.8%)増えた(警察庁「令和7年の犯罪情勢」)。2016年から2022年まで6年続いた減少が2023年に反転し、3年連続の増加で2017年(10万8,009件)に迫る水準まで戻っている。増え方は場所によって大きく違い、2020年と比べるとコンビニエンスストアが48.0%増と最も大きく、商業施設の11.2%増を大きく上回る。
調査概要
認知件数とは、警察が被害の届出などによって把握した件数のことである。万引きは2016年の11万2,702件から2022年の8万3,598件まで6年連続で減り、この間に2万9,104件(25.8%)少なくなった。防犯カメラの普及や自動精算機の導入が進んだ時期と重なる。
ところが2023年に流れが変わる。9万3,168件と前年から9,570件増え、以後3年連続で増加。2025年は10万5,135件(前年比6,843件・7.0%増)となり、6年かけて減らした2万9,104件のうち74%を3年で戻したことになる。万引きは万引き・車上ねらい・置引きなどを含む非侵入窃盗のなかで最も大きく、2025年は非侵入窃盗全体の38.5%を占めた。次のグラフで、反転してからの3年を拡大して見る。
2022年を底に、2023年+9,570件、2024年+5,124件、2025年+6,843件と3年続けて増えた。減少局面が6年かけて年平均4,851件ずつ減ったのに対し、増加局面は年平均7,179件と、戻りのほうが速い。
同じ資料には、被害品の内訳も載っている。2025年に被害品として食料品類を含むものは5万3,186件で、前年から5,915件(12.5%)増えた。万引き全体の増加が6,843件だったことを考えると、増えた分のほとんどが食料品類を含む万引きだったことになる。原典は増加の理由を明記していないが、何が盗まれているかは数字に表れている。
この統計から確実に言えるのは、件数が3年続けて増えたことと、被害品に食料品類を含むものが12.5%増えたことの2点である。警察庁の資料は増加の要因について記述していないため、「物価高が原因」と断定することはできない。認知件数は店舗が警察に届け出て初めて計上されるため、店舗側の対応方針が変われば数字も動く。防犯カメラやAIカメラの導入が進めば発見率が上がり、届出が増えることもある。それでも、6年連続の減少が3年連続の増加に転じ、増加分の大半が食料品類を含むものだったという事実は、店頭で起きている変化として押さえておく価値がある。
発生場所別の統計は2020年から取られている。2025年の件数は商業施設5万6,652件、コンビニエンスストア2万2,929件、ドラッグストア1万6,123件、その他9,431件で、件数そのものは商業施設が半分以上を占める。ところが2020年と比べた伸びは大きく違い、コンビニが48.0%増、ドラッグストアが27.6%増、商業施設は11.2%増にとどまる。
この5年で万引きは1万7,855件増えたが、そのうちコンビニが7,438件(42%)を占めた。万引き全体に占めるコンビニの割合も17.7%から21.8%へ上がっている。2025年単年で見ても、コンビニは前年比14.6%増と、商業施設の5.6%増、ドラッグストアの6.3%増より大きい。増えているのは大型店ではなく、街角の小さな店である。
場所別の件数は店舗数の影響を受けるため、店が増えれば件数も増えやすい。ただしコンビニについては逆で、経済産業省の商業動態統計によると店舗数は2021年から2024年まで4年連続で減り(5万6,542店→5万5,988店)、2025年に5万6,659店へ戻している。店舗数がほぼ横ばいから微減の期間に万引きが48%増えたことになり、店が増えたから件数も増えたという説明は成り立たない。1店あたりに直すと2020年の0.27件から2025年の0.40件へ、48%増える計算になる(別統計を組み合わせた編集部の試算で、警察庁の公表値ではない)。もう一点、万引きの検挙率は68.8%で、刑法犯全体の38.9%の1.8倍にあたる。最も捕まりやすい犯罪でありながら、それでも増えている——これがこの3年の特徴である。
| 年 | 認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 | 商業施設 | コンビニ | ドラッグストア | その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2016 | 112,702 | 78,131 | 69.3% | — | — | — | — |
| 2017 | 108,009 | 75,257 | 69.7% | — | — | — | — |
| 2018 | 99,692 | 71,330 | 71.6% | — | — | — | — |
| 2019 | 93,812 | 65,814 | 70.2% | — | — | — | — |
| 2020 | 87,280 | 62,609 | 71.7% | 50,964 | 15,491 | 12,632 | 8,193 |
| 2021 | 86,237 | 63,493 | 73.6% | 50,308 | 15,106 | 12,326 | 8,497 |
| 2022 | 83,598 | 58,283 | 69.7% | 48,559 | 15,366 | 12,278 | 7,395 |
| 2023 | 93,168 | 62,675 | 67.3% | 53,036 | 17,651 | 13,870 | 8,611 |
| 2024 | 98,292 | 66,983 | 68.1% | 53,627 | 20,003 | 15,161 | 9,501 |
| 2025 | 105,135 | 72,339 | 68.8% | 56,652 | 22,929 | 16,123 | 9,431 |
出典:警察庁「令和7年の犯罪情勢」(2026年2月公表)図14(万引きの認知件数)・図15(発生場所別の認知件数)・図16(認知件数、検挙件数及び検挙率)。発生場所別は統計を取り始めた2020年(令和2年)以降。各年の場所別の合計は認知件数と一致する(2025年=5万6,652+2万2,929+1万6,123+9,431=10万5,135件)。増減率・指数・構成比は公表値をもとに編集部が算出した。
万引きは長らく「減っている犯罪」だった。その流れが2023年に切り替わり、3年で2万件以上増えて2017年の水準に近づいている。増えているのは商業施設よりコンビニで、盗まれているものには食料品類が多い。次に見るべき観測点は3つある。コンビニの伸びが2026年も二桁を続けるのか、食料品類を含む被害が5万件台からさらに増えるのか、そして68.8%で横ばいが続く検挙率が動くのか。令和8年の犯罪情勢は2027年2月ごろの公表が見込まれる。
※出典:警察庁「令和7年の犯罪情勢」(令和8年2月公表)。認知件数は警察が被害の届出等により事件として把握した件数であり、実際に発生した件数(暗数を含む)ではない。発生場所別の集計は2020年(令和2年)から。「商業施設」とは商品販売やサービスの提供といった商業活動を目的とした施設で、比較的大型の小売店や商売を行う店舗が複数入居する建物等をいい、デパート、ショッピングモール、ショッピングセンター、スーパーマーケット、ホームセンター、家電量販店等が該当する(原典脚注)。刑法犯全体の検挙率38.9%、認知件数77万4,142件は同資料の図1・図2による。コンビニエンスストアの店舗数(2020年5万6,542店→2024年5万5,988店→2025年5万6,659店)は経済産業省「商業動態統計」時系列データによるもので、警察庁の統計とは調査主体・集計対象が異なる別統計であり、両者を組み合わせた1店あたりの試算は編集部によるものである。指数・増減率・構成比・年平均増減も公表値をもとに編集部が算出した。
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