企業倒産、4年で6,030件→10,300件。その6.6倍で進む「静かな退場」

企業倒産、4年で6,030件→10,300件のグラフ 定点観測

中小企業庁の統計によると、2025年の企業倒産件数は10,300件と4年連続で増加し、コロナ流行下の2021年(6,030件)から約1.7倍になった。2026年版中小企業白書によれば、休廃業・解散は67,949件(倒産の約6.6倍)にのぼり、黒字のまま退場した企業は49.1%と初めて半数を下回った。

調査概要

グラフ①:企業倒産件数の推移(2016〜2025年)
毎年更新:この記事は「定点観測」シリーズです。統計の最新値が公表されるたびに、同じURLで更新します(最終更新:2026年7月)
企業倒産件数の10年推移
2016年〜2025年(10年間)|中小企業庁「倒産の状況」(東京商工リサーチ調べ・負債総額1,000万円以上)|背景帯は新型コロナ流行期(2020年1月 国内初確認〜2023年5月 5類移行)
→ コロナ流行期にむしろ減少し、5類移行の年から急増した
新型コロナ流行期 2020年1月〜2023年5月(5類移行) 12,000件8,000件4,000件0 8,446件 6,030件 10,300件 20162018202120232025 企業倒産件数(中小企業庁「倒産の状況」) 新型コロナ流行期(2020.1〜2023.5)

企業倒産は、2016年の8,446件から緩やかな減少を続け、2021年には6,030件(前年比▲22.4%)と、この10年で最も少ない水準まで下がった。興味深いのはその時期だ。グラフの背景帯が示すとおり、倒産が最も少なかったのは新型コロナの流行のさなか(2020〜2022年)である。実質無利子・無担保融資をはじめとする資金繰り支援が講じられていた時期にあたる。

そして白書が指摘するとおり、倒産件数は2021年を底に増加傾向へ転じた。急増が始まったのは、感染症が5類に移行した2023年——つまり倒産のグラフは、流行の波から2年ほど遅れて逆向きに動いている。2025年は10,300件と4年連続の増加で、底からの4年で1.7倍になった。次のグラフで転換点を拡大して見る。

グラフ②:急変点ズームイン(2021〜2023年)
2023年——倒産件数が1年で35.1%増えた
2021年〜2023年|グラフ①と同スケール(縦軸0〜12,000件)|2023年5月に新型コロナは5類感染症へ移行
→ 1年で+2,262件。5類移行の年に、減少トレンドが明確に反転した
12,000件8,000件4,000件0 6,030件 6,428件 8,690件 1年で +35.1%(+2,262件) 「2021年を底に増加傾向に転じた」 ——2026年版 中小企業白書(第1-1-39図) 2021年2022年2023年 10年間の最少(コロナ流行下)▲ 5類移行の年に反転

転換点は2023年だった。前年から2,262件増(+35.1%)という大きな伸びで、その後も2024年+15.1%、2025年+2.9%と増加が続いている。白書は倒産企業の内訳について、従業員10人未満の企業が大半を占め、業種別では「サービス業他」の割合が最も高く、次いで建設業、製造業と記している。

数字を読むときの注意

ここでの「倒産」は負債総額1,000万円以上のものが集計対象で、法的倒産(会社更生法・民事再生法・破産・特別清算)と私的倒産(銀行取引停止処分・内整理)を含む。つまりこの1万件は「債務の支払不能に陥った企業」であり、経営者が自らの判断で会社を畳むケースは含まれていない。それは次のグラフの「休廃業・解散」として、別の統計に現れる。なお倒産の増減とコロナ禍・各種支援策との因果関係について、白書は言及していない。本記事も時期の対応関係の提示に留める。

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グラフ③:休廃業・解散との比較——退場の主役は倒産ではない
企業倒産件数(左軸)と休廃業・解散件数(右軸)の推移
2016年〜2025年|左軸:中小企業庁「倒産の状況」/右軸:2026年版中小企業白書(帝国データバンク調べ)
→ 倒産1万件の裏で、その6.6倍が退場している
24,00018,00012,0006,0000 80,00060,00040,00020,0000 67,949件 10,300件 休廃業・解散は倒産の約6.6倍(2025年) 20162018202120232025 倒産件数(左軸) 休廃業・解散件数(右軸)

倒産よりはるかに大きな規模で進んでいるのが、債務不履行によらず事業をやめる「休廃業・解散」だ。2025年は67,949件——倒産(10,300件)の約6.6倍にのぼる。白書によれば、休廃業・解散は2016年から2022年にかけて減少傾向にあったが、2023年に増加傾向へ転じ、2024年に69,019件を記録。2025年は前年から減少した。2本の線は集計主体が異なるにもかかわらず、どちらもコロナ流行期に減り、2023年に増加へ転じる同じ形を描いている。

中身の変化も白書は記録している。黒字の状態で休廃業・解散に至る企業の割合は低下傾向にあり、2025年は49.1%と半数を下回った。また休廃業・解散した企業の経営者は70代・80代以上の割合と平均年齢が上昇傾向にあり、2025年の平均年齢は71.5歳(2016年は67.4歳)である。

このグラフの正しい読み方

2つの統計は集計主体も定義も異なる(倒産=東京商工リサーチ・負債1,000万円以上/休廃業・解散=帝国データバンク・法的整理によらない事業停止等)ため、単純な合算はできない。それでも「毎年、倒産の数倍の企業が債務整理を経ずに市場から退出している」という規模感、そして「黒字のまま退場する企業の割合が下がり続けている」という白書の指摘は、取引先の与信管理や事業承継を考えるうえで倒産件数だけを見ていては掴めない変化である。

グラフ④:倒産1件あたりの規模——13年で最小の「小口化」
倒産1件あたりの平均負債額の推移(2013〜2025年)
単位:億円/1件平均負債=負債総額÷倒産件数で算出。東京商工リサーチ「倒産件数・負債額推移」(負債1,000万円以上・各年確定値)より
→ 件数は最高水準に戻る一方、1件あたりの負債は1.5億円と13年で最小。倒産が「小口化」している
4.0億3.0億2.0億1.0億0 2.6億 3.8億(大型倒産の年) 3.6億 1.5億円 20132016201920222025 倒産1件あたり平均負債額(億円)

倒産の「数」だけでなく「規模」も見ておきたい。ある年の負債“総額”は大型倒産が1件あるだけで大きく振れるため(2017年は約3.2兆円、2022年は約2.3兆円と特定の大型案件で跳ね上がっている)、規模の傾向は負債総額を件数で割った「1件あたりの平均負債額」で追うのが適切だ。すると、件数が2013年以来の高水準に戻る一方で、1件あたりの平均負債は2025年に約1.5億円と、この13年間で最も小さい(次いで低いのは2020年の約1.6億円)。数は増えても、倒れているのは規模の小さな企業が中心——倒産の「小口化」が進んでいる。

「小口化」——退場の主役は小さな会社

件数の増加と1件あたり規模の縮小が同時に起きることは、倒産の主役が大企業・中堅企業ではなく中小・零細企業へと移っていることを示している。ゼロゼロ融資の返済開始、物価高による原価上昇、人手不足と人件費の高騰は、体力の乏しい小規模事業者ほど重くのしかかる。先に見た「黒字のまま退場する休廃業の増加」「経営者の高齢化」とあわせて読むと、いま市場から退出しているのは負債の大きい派手な倒産ではなく、静かに力尽きる小さな会社だという構図が浮かび上がる。

データ一覧:企業倒産件数と休廃業・解散件数の推移(2016〜2025年)
出典:中小企業庁 倒産の状況・2026年版中小企業白書
倒産件数休廃業・解散件数黒字休廃業の割合
2016年8,446件60,168件55.7%
2017年8,405件59,702件54.5%
2018年8,235件58,519件56.0%
2019年8,383件59,225件55.4%
2020年7,773件56,103件57.1%
2021年6,030件54,709件56.2%
2022年6,428件53,426件54.3%
2023年8,690件59,105件51.9%
2024年10,006件69,019件51.1%
2025年10,300件67,949件49.1%

※倒産は中小企業庁「倒産の状況」(東京商工リサーチ調べ・負債総額1,000万円以上)、休廃業・解散と黒字割合は2026年版中小企業白書(帝国データバンク調べ)。集計主体・定義が異なるため直接の合算・比較はできない。

先を読む
2025年——倒産10,300件・休廃業・解散67,949件。黒字廃業は49.1%で初の半数割れ。

直近の確定値では、倒産の増加率は2023年の+35.1%から2025年は+2.9%へ縮小し、休廃業・解散は前年から減少した。一方で黒字廃業の割合低下と経営者の高齢化(平均71.5歳)は10年間一貫して進んでいる。次の観測点は、中小企業庁「倒産の状況」の2026年の年次値と、2027年版中小企業白書での休廃業・解散の更新値である。

このデータをプレゼンで使うには
ターゲット:金融機関・士業(税理士・診断士)・M&A/事業承継・与信管理・営業企画
SCENE 01|与信管理・営業会議
「取引先リスク」の規模感を伝える
「倒産は4年で1.7倍の10,300件。ただし本当に見るべきはその6.6倍、年6.8万件の休廃業・解散です。取引先は”潰れる”前に”静かに畳む”——与信情報だけでは捕捉できません。」
SCENE 02|事業承継・M&A提案
「早めの決断」を促す根拠として
「黒字のまま廃業できた企業は49.1%と、ついに半数を切りました。経営者の平均年齢は71.5歳。余力があるうちに承継や売却を考える——その分岐点がデータに表れています。」
SCENE 03|経営層向け・市場環境の説明
環境変化の「転換点」を示す
「倒産が最も少なかったのはコロナ流行のさなかで、5類移行の2023年に前年比+35.1%と反転しました。感染症の波と経営環境の波は2年ズレて動いた——計画の起点に置くべき数字です。」
生成AIでグラフを生成する
ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeなどに下のプロンプトをそのまま貼り付けるだけで、同じ2軸グラフが自動で生成されます。
以下のデータをもとに2軸の折れ線グラフを作成してください。 【データ】 年, 倒産件数(件), 休廃業・解散件数(件) 2016年, 8446, 60168 2017年, 8405, 59702 2018年, 8235, 58519 2019年, 8383, 59225
… (10年分の全データ・グラフ仕様・出典・注記を含む全文)

※出典:倒産件数は中小企業庁「倒産の状況」(株式会社東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」のとりまとめ。負債総額1,000万円以上・法的倒産と私的倒産を含む)。休廃業・解散件数、損益別構成比、経営者年齢は「2026年版中小企業白書」第1-1-41〜43図(株式会社帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査」。倒産〈法的整理〉によるものを除く)。2つの統計は集計主体・定義が異なるため直接の合算・比較はできない。「6.6倍」は2025年の両統計の件数比(67,949÷10,300)を本記事で算出したもの。グラフ①の「新型コロナ流行期」帯は国内初確認(2020年1月)から感染症法上の5類移行(2023年5月8日)までを示した参考情報であり、倒産の増減との因果関係を示すものではない。

よくある質問
企業倒産は年間何件ありますか?
中小企業庁「倒産の状況」(東京商工リサーチ調べ)によると、2025年の企業倒産は10,300件です。2021年の6,030件を底に4年連続で増加し、底からの4年で約1.7倍になりました。集計対象は負債総額1,000万円以上の倒産です。
倒産件数はいつから増え始めましたか?
2026年版中小企業白書によると、倒産件数は2021年を底に増加傾向に転じました。特に新型コロナが5類感染症へ移行した2023年は前年比+35.1%(6,428件→8,690件)と大きく増加しています。倒産が最も少なかったのはコロナ流行のさなかで、増加への反転は流行の収束期と重なっています。
休廃業・解散は倒産とどう違いますか?
休廃業・解散は、債務の支払不能(倒産)によらず、特段の手続を取らずに事業を停止したり解散したりすることです(帝国データバンク調べ)。2025年は67,949件と倒産(10,300件)の約6.6倍にのぼります。黒字のまま休廃業・解散した企業の割合は2025年に49.1%と初めて半数を下回り、経営者の平均年齢は71.5歳まで上昇しています。
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