特殊詐欺の被害額は2025年(令和7年)に1,423.1億円と前年からほぼ倍増(+98.0%)し過去最悪を更新した(警察庁・確定値)。SNS型投資・ロマンス詐欺の1,834.3億円を合わせた被害総額は3,257.4億円、1日あたり約8.9億円に相当する。
調査概要
特殊詐欺の被害額は、2016年の407.7億円から2021年の282.0億円まで、対策の浸透とともに着実に減り続けていた。ところが2022年に増加へ転じると4年連続で拡大し、2025年には1,423.1億円と過去最悪を更新。底だった2021年からわずか4年で5.0倍に膨らんだ。
注目すべきは件数と金額のズレだ。認知件数は10年で約2倍(14,154件→27,832件)なのに、被害額は3.5倍。「詐欺の数」より「1件でだまし取られる金額」が増えている。次のグラフで、急騰した直近2年に何が起きたかを見る。
2025年の急騰を1つの手口が押し上げた。警察官を名乗り「あなたの口座が犯罪に使われている」「捜査に協力してほしい」と脅して資産を送金させる「ニセ警察詐欺」である。この手口だけで被害額は998.7億円——特殊詐欺全体の7割に相当する。
被害の質も変わった。だまし取られた金額は既遂1件あたり350.3万円(2024年)から523.6万円(2025年)へ上昇。さらに認知件数では20代・30代が前年の2倍以上に増え、「特殊詐欺=高齢者が狙われるもの」という常識が崩れつつある。
従来のオレオレ詐欺は「息子を装って数百万円」が典型だった。ニセ警察詐欺は「捜査対象になっている」という公権力の恐怖で被害者を数日間拘束し、預貯金や投資資産まで全額を送金させる。1回の接触で奪う金額が桁違いに大きい。交付形態も現金の手渡しから振込型(約6割)や暗号資産送信型へ移り、対面の網にかからなくなったことが被害の大型化を後押ししている。
実は、過去最悪を更新した特殊詐欺よりも大きな被害を出している詐欺がある。SNSで投資話や恋愛感情を装って現金をだまし取るSNS型投資・ロマンス詐欺は、統計開始からわずか3年目の2025年に1,834.3億円——特殊詐欺を411億円上回った。統計開始の2023年には両者はほぼ同額(452.6億円と455.2億円)だったが、2年でSNS型が引き離した。
2つを合計すると年間3,257.4億円、1日あたり約8.9億円がだまし取られている計算になる。電話からSNSへ主戦場が移ったのではない。電話の詐欺もSNSの詐欺も、同時に過去最悪を更新しているのがこの3年の現実だ。
2系列は警察庁の同一資料に基づくが、手口の性質は大きく異なる。特殊詐欺は電話で接触し(約8割)現金や振込でだまし取る。SNS型はInstagramやYouTube広告などから接触し、被害の中心は50代、増加率は30代が最多。つまり「電話に出る高齢者」と「SNSを使う現役世代」の両方が別々の手口で狙われており、どの世代にとっても他人事ではない構図になっている。
| 年 | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 2016年 | 14,154件 | 407.7億円 |
| 2017年 | 18,212件 | 394.7億円 |
| 2018年 | 17,844件 | 382.9億円 |
| 2019年 | 16,851件 | 315.8億円 |
| 2020年 | 13,550件 | 285.2億円 |
| 2021年 | 14,498件 | 282.0億円 |
| 2022年 | 17,570件 | 370.8億円 |
| 2023年 | 19,038件 | 452.6億円 |
| 2024年 | 21,043件 | 718.8億円 |
| 2025年 | 27,832件 | 1,423.1億円 |
※SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は2023年455.2億円→2024年1,271.9億円→2025年1,834.3億円(2023年統計開始)。「ニセ警察詐欺」(2025年1月統計開始)は単独で998.7億円。
ニセ警察詐欺は2025年1月に統計を開始したばかりで、令和8年に初めて通年の前年比較が可能になる。国際電話の利用休止申請、金融機関の口座凍結強化、著名人なりすまし広告への規制——対策側の打ち手も出そろいつつあり、2026年は「対策が単価の上昇に追いつくか」を見極める年になる。観測点は2つ。ニセ警察詐欺の998.7億円が減少に転じるか、そしてSNS型が2,000億円の大台に乗るかどうかだ。
※出典:警察庁「特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(令和7年・確定値)」。特殊詐欺はオレオレ詐欺・預貯金詐欺・架空料金請求詐欺・還付金詐欺等の総称。SNS型投資・ロマンス詐欺は2023年(令和5年)から統計開始のため3年分の掲載。「ニセ警察詐欺」は2025年(令和7年)1月から統計開始(2024年中の同種手口はオレオレ詐欺〈その他名目〉として4,261件・375.9億円)。年代別の件数は法人被害を除く個人被害の集計。金額は警察庁公表の確定値。
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