中小企業庁の統計によると、2025年の企業倒産件数は10,300件と4年連続で増加し、コロナ流行下の2021年(6,030件)から約1.7倍になった。2026年版中小企業白書によれば、休廃業・解散は67,949件(倒産の約6.6倍)にのぼり、黒字のまま退場した企業は49.1%と初めて半数を下回った。
調査概要
企業倒産は、2016年の8,446件から緩やかな減少を続け、2021年には6,030件(前年比▲22.4%)と、この10年で最も少ない水準まで下がった。興味深いのはその時期だ。グラフの背景帯が示すとおり、倒産が最も少なかったのは新型コロナの流行のさなか(2020〜2022年)である。実質無利子・無担保融資をはじめとする資金繰り支援が講じられていた時期にあたる。
そして白書が指摘するとおり、倒産件数は2021年を底に増加傾向へ転じた。急増が始まったのは、感染症が5類に移行した2023年——つまり倒産のグラフは、流行の波から2年ほど遅れて逆向きに動いている。2025年は10,300件と4年連続の増加で、底からの4年で1.7倍になった。次のグラフで転換点を拡大して見る。
転換点は2023年だった。前年から2,262件増(+35.1%)という大きな伸びで、その後も2024年+15.1%、2025年+2.9%と増加が続いている。白書は倒産企業の内訳について、従業員10人未満の企業が大半を占め、業種別では「サービス業他」の割合が最も高く、次いで建設業、製造業と記している。
ここでの「倒産」は負債総額1,000万円以上のものが集計対象で、法的倒産(会社更生法・民事再生法・破産・特別清算)と私的倒産(銀行取引停止処分・内整理)を含む。つまりこの1万件は「債務の支払不能に陥った企業」であり、経営者が自らの判断で会社を畳むケースは含まれていない。それは次のグラフの「休廃業・解散」として、別の統計に現れる。なお倒産の増減とコロナ禍・各種支援策との因果関係について、白書は言及していない。本記事も時期の対応関係の提示に留める。
倒産よりはるかに大きな規模で進んでいるのが、債務不履行によらず事業をやめる「休廃業・解散」だ。2025年は67,949件——倒産(10,300件)の約6.6倍にのぼる。白書によれば、休廃業・解散は2016年から2022年にかけて減少傾向にあったが、2023年に増加傾向へ転じ、2024年に69,019件を記録。2025年は前年から減少した。2本の線は集計主体が異なるにもかかわらず、どちらもコロナ流行期に減り、2023年に増加へ転じる同じ形を描いている。
中身の変化も白書は記録している。黒字の状態で休廃業・解散に至る企業の割合は低下傾向にあり、2025年は49.1%と半数を下回った。また休廃業・解散した企業の経営者は70代・80代以上の割合と平均年齢が上昇傾向にあり、2025年の平均年齢は71.5歳(2016年は67.4歳)である。
2つの統計は集計主体も定義も異なる(倒産=東京商工リサーチ・負債1,000万円以上/休廃業・解散=帝国データバンク・法的整理によらない事業停止等)ため、単純な合算はできない。それでも「毎年、倒産の数倍の企業が債務整理を経ずに市場から退出している」という規模感、そして「黒字のまま退場する企業の割合が下がり続けている」という白書の指摘は、取引先の与信管理や事業承継を考えるうえで倒産件数だけを見ていては掴めない変化である。
倒産の「数」だけでなく「規模」も見ておきたい。ある年の負債“総額”は大型倒産が1件あるだけで大きく振れるため(2017年は約3.2兆円、2022年は約2.3兆円と特定の大型案件で跳ね上がっている)、規模の傾向は負債総額を件数で割った「1件あたりの平均負債額」で追うのが適切だ。すると、件数が2013年以来の高水準に戻る一方で、1件あたりの平均負債は2025年に約1.5億円と、この13年間で最も小さい(次いで低いのは2020年の約1.6億円)。数は増えても、倒れているのは規模の小さな企業が中心——倒産の「小口化」が進んでいる。
件数の増加と1件あたり規模の縮小が同時に起きることは、倒産の主役が大企業・中堅企業ではなく中小・零細企業へと移っていることを示している。ゼロゼロ融資の返済開始、物価高による原価上昇、人手不足と人件費の高騰は、体力の乏しい小規模事業者ほど重くのしかかる。先に見た「黒字のまま退場する休廃業の増加」「経営者の高齢化」とあわせて読むと、いま市場から退出しているのは負債の大きい派手な倒産ではなく、静かに力尽きる小さな会社だという構図が浮かび上がる。
| 年 | 倒産件数 | 休廃業・解散件数 | 黒字休廃業の割合 |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 8,446件 | 60,168件 | 55.7% |
| 2017年 | 8,405件 | 59,702件 | 54.5% |
| 2018年 | 8,235件 | 58,519件 | 56.0% |
| 2019年 | 8,383件 | 59,225件 | 55.4% |
| 2020年 | 7,773件 | 56,103件 | 57.1% |
| 2021年 | 6,030件 | 54,709件 | 56.2% |
| 2022年 | 6,428件 | 53,426件 | 54.3% |
| 2023年 | 8,690件 | 59,105件 | 51.9% |
| 2024年 | 10,006件 | 69,019件 | 51.1% |
| 2025年 | 10,300件 | 67,949件 | 49.1% |
※倒産は中小企業庁「倒産の状況」(東京商工リサーチ調べ・負債総額1,000万円以上)、休廃業・解散と黒字割合は2026年版中小企業白書(帝国データバンク調べ)。集計主体・定義が異なるため直接の合算・比較はできない。
直近の確定値では、倒産の増加率は2023年の+35.1%から2025年は+2.9%へ縮小し、休廃業・解散は前年から減少した。一方で黒字廃業の割合低下と経営者の高齢化(平均71.5歳)は10年間一貫して進んでいる。次の観測点は、中小企業庁「倒産の状況」の2026年の年次値と、2027年版中小企業白書での休廃業・解散の更新値である。
※出典:倒産件数は中小企業庁「倒産の状況」(株式会社東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」のとりまとめ。負債総額1,000万円以上・法的倒産と私的倒産を含む)。休廃業・解散件数、損益別構成比、経営者年齢は「2026年版中小企業白書」第1-1-41〜43図(株式会社帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査」。倒産〈法的整理〉によるものを除く)。2つの統計は集計主体・定義が異なるため直接の合算・比較はできない。「6.6倍」は2025年の両統計の件数比(67,949÷10,300)を本記事で算出したもの。グラフ①の「新型コロナ流行期」帯は国内初確認(2020年1月)から感染症法上の5類移行(2023年5月8日)までを示した参考情報であり、倒産の増減との因果関係を示すものではない。
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