東京商工リサーチの集計によると、仕入コストの上昇や価格転嫁の難しさを主因とする「物価高」倒産は、集計を開始した2022年の286件から2025年には769件へ3年連続で増加し、過去最多を更新し続けている。2025年上半期は前年同期比8.2%減と、いったんは減速に見えた。しかし下半期に425件(前年同期比+30%)へ急反転し、2026年上半期は439件と半期の最多を更新。物価高倒産は収束どころか、むしろ加速している。
調査概要
毎年更新:この記事は「定点観測」シリーズです。統計の最新値が公表されるたびに、同じURLで更新します(最終更新:2026年7月)
グラフ①:物価高倒産の推移——半期90件から439件へ
「物価高」倒産の件数(半期別)
2022年上半期〜2026年上半期(半期・件)|東京商工リサーチ(仕入コスト上昇・価格転嫁難などを主因とする倒産・負債1,000万円以上)
→ 集計開始の2022年上半期90件から2026年上半期は439件へ。4年で約4.9倍に増えた
円安と原材料高が本格化した2022年、東京商工リサーチは「物価高」を主因とする倒産の集計を開始した。初年の2022年上半期は90件。そこから半期ごとに積み上がり、2026年上半期は439件と、4年で約4.9倍に達した。年間では2022年286件→2023年646件→2024年702件→2025年769件と、3年連続で最多を更新している。ただしこの右肩上がりは、一本調子ではなかった。次のグラフで、直近2年の「見せかけの収束」を切り取る。
グラフ②:減速に見えた直後の急反転——2025年下半期+30%
物価高倒産のズームイン(2024年上半期〜2026年上半期)
2024年上半期〜2026年上半期(半期・件/縦軸はグラフ①と同じ0〜500件)|同一集計・全国
→ 2024年下半期・2025年上半期と2期連続の前年割れ。「峠を越えた」と思われた直後、2025年下半期に前年同期比+30%へ急反転した
2024年下半期は327件(前年同期比4.7%減)、2025年上半期は344件(同8.2%減)と、前年割れが2期続いた。円安のピークも過ぎ、物価高倒産は峠を越えた——そんな空気が漂った矢先の2025年下半期、件数は425件(前年同期比+30%)へ一気に跳ね上がる。さらに2026年上半期は439件と半期の最多を更新し、2025年12月から7カ月連続で前年同月を上回った(2026年7月公表時点)。減速は収束ではなく、踊り場にすぎなかった。
なぜ再加速したのか——「値上げ分を転嫁できない」零細企業に集中
2025年の物価高倒産の内訳(2026年1月公表時点の集計)を見ると、資本金1千万円未満が6割(60.4%)、従業員10人未満が7割(70.9%)を占め、業種別では飲食店が唯一の100件超と最多だった。原材料・光熱費・人件費が上がり続ける一方で、価格転嫁の交渉力が弱い小規模事業者ほど値上げ分を吸収できない。物価上昇のペースが落ち着いても、累積したコスト増は消えない——再加速の背景には、この「転嫁できない構造」がある。
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グラフ③:倒産3大要因の比較——件数の主役は物価高
要因別倒産の年次推移(物価高・人手不足・後継者難)
2022年〜2025年(暦年・件/縦軸0〜800件)|いずれも東京商工リサーチの要因別集計。各系列は別カウントのため合算不可
→ 物価高倒産は2023年に後継者難を追い越し、件数最大の要因に。2025年769件は人手不足倒産(397件)の約2倍
倒産の「3大要因」と呼ばれる物価高・人手不足・後継者難を並べると、構図がはっきりする。2022年時点で最大だったのは後継者難(425件)で、物価高は286件にすぎなかった。しかし物価高は2023年に646件へ倍増して後継者難を追い越し、2025年は769件と人手不足倒産(397件)の約2倍に達した。伸び率では人手不足が3年で6.4倍と最速だが、件数の主役はあくまで物価高である。ニュースでは「人手不足倒産が過去最多」が目立つが、いま企業を最も多く倒しているのは、値上げの波を転嫁しきれないコスト構造なのだ。
このグラフの正しい読み方——3つの系列は「足し算」できない
3系列はいずれも東京商工リサーチの要因別集計(負債1,000万円以上)だが、それぞれ独立したリリースで公表される別カウントであり、1件の倒産が複数の集計に該当し得るため単純合算はできない。また物価高・人手不足(人件費高騰)は同じ「コスト上昇」の裏表でもある。仕入も賃金も上がるなかで価格転嫁が追いつかない——3本の線は別々の問題ではなく、同じ構造の異なる断面と読むのが正しい。倒産全体(2025年10,300件)が11年ぶりの1万件台で推移するなか、要因別の内訳がどう動くかが今後の焦点になる。
「物価高」倒産の件数の推移(半期別・2022〜2026年・単位:件)
| 年 | 上半期 | 下半期 | 年間合計 |
| 2022 | 90 | 196 | 286 |
| 2023 | 303 | 343 | 646 |
| 2024 | 375 | 327 | 702 |
| 2025 | 344 | 425 | 769 |
| 2026 | 439 | — | — |
出典:東京商工リサーチ「『物価高』倒産」年間リリース(2026年1月公表)および「2026年上半期『物価高』倒産」(2026年7月公表)。仕入コストや資源・原材料の上昇、価格上昇分を価格転嫁できなかった等を主因とする倒産(法的・私的/負債1,000万円以上)。集計開始は2022年。2025年の年間件数は1月公表時767件(下半期423件)から、2026年7月公表の月次推移で769件(下半期425件)に修正されており、本記事は最新値を採用。グラフ③の人手不足・後継者難は同社の別リリース(いずれも2026年1月公表)による。
先を読む
2026年——上半期だけで439件。初の年間800件超えが視野に。
2026年上半期の439件は、年間で最も少なかった2022年(286件)の1.5倍を、わずか半年で超えた水準だ。下半期が例年並みに推移すれば、初の年間800件台が現実味を帯びる。観測点は2つ。飲食店を筆頭とする小規模事業者の倒産がどこまで広がるか、そして価格転嫁の進み具合(中小企業の転嫁率はいまだ5割前後)が件数の伸びを止められるか。次回の年間確定値(例年1月公表)が答え合わせになる。
このデータをプレゼンで使うには
ターゲット:経営企画・営業・金融機関・中小企業支援/価格改定・値上げ交渉の担当者
SCENE 01|経営会議・価格改定の稟議
「値上げしない」ことのリスクを数字で示す
「物価高を主因とする倒産は集計開始から3年で2.7倍の769件、2026年は上半期だけで439件と過去最多ペースです。倒れているのは値上げ分を転嫁できなかった企業です。価格改定は攻めではなく、生存のための守りの施策と考えるべき局面です。」
SCENE 02|金融機関・中小企業支援
「収束した」という楽観を数字で正す
「物価高倒産は2025年前半に前年割れが続き収束に見えましたが、下半期に前年同期比3割増へ急反転しました。資本金1千万円未満が6割、従業員10人未満が7割。支援の焦点は小規模事業者の価格転嫁の後押しです。」
SCENE 03|営業・取引先への値上げ交渉
交渉のテーブルに客観データを載せる
「倒産の3大要因を並べると、話題の人手不足(397件)や後継者難(454件)より物価高(769件)が最多で、約2倍の規模です。適正な価格転嫁はサプライチェーン全体の存続条件になっている——この構図を前提に、価格の見直しをご相談させてください。」
生成AIでグラフを生成する
以下のデータをもとに、半期別の折れ線グラフを作成してください。
【データ】(単位:件)
半期, 物価高倒産
2022上, 90
2022下, 196
2023上, 303
… (2022〜2026年の全データ・年間合計・3大要因比較・グラフ仕様・出典・注記を含む全文)
📎 引用・転載について
本記事のグラフ・数値・データ表は、出典として本記事へのリンク(「出典:DataSlide」+記事URL)を明記いただければ、ブログ・資料・SNS等で自由に転載いただけます。事前連絡は不要です。
よくある質問
物価高倒産は2025年に何件でしたか?
東京商工リサーチの集計によると、2025年の「物価高」倒産は769件で、集計を開始した2022年(286件)から3年連続で最多を更新しました(約2.7倍)。物価高倒産とは、仕入コストや資源・原材料の上昇、価格上昇分を価格転嫁できなかった等を主因とする、負債総額1,000万円以上の倒産(法的・私的)を指します。なお2026年1月公表時点の767件は、その後の月次推移チャート(2026年7月公表)で769件に修正されています。
物価高倒産は減っていたのではないですか?
一時的には減っていました。2024年下半期は327件(前年同期比4.7%減)、2025年上半期は344件(同8.2%減)と前年割れが2期続き、峠を越えたように見えました。しかし2025年下半期に425件(前年同期比+30%)へ急反転し、2026年上半期は439件と半期の最多を更新。2025年12月から7カ月連続で前年同月を上回っており(2026年7月公表時点)、減速は収束ではなく踊り場でした。
倒産の要因で最も多いのは物価高ですか?
倒産の3大要因と呼ばれる物価高・人手不足・後継者難を比べると、件数が最も多いのは物価高です。2025年は物価高769件・後継者難454件・人手不足397件で、物価高は人手不足倒産の約2倍にのぼります。物価高倒産は2023年に後継者難を追い越して最大の要因になりました。なお3系列はいずれも東京商工リサーチの要因別集計ですが、別カウントのため単純合算はできません。