情報サービス業の倒産、4年で137件→276件。DX特需の裏で進む「静かな淘汰」

定点観測

東京商工リサーチの集計によると、ソフトウェア開発やホームページ制作などを手がける情報サービス業の倒産は、2021年の137件を底に増加へ転じ、2025年は276件、2026年上半期は166件と2017年以降で最多となった。DX特需や人材の売り手市場が語られる一方で、ノーコード・生成AIによる内製化が進み、価格競争に依存する小・零細の受託事業者が静かに淘汰されている。

調査概要

毎年更新:この記事は「定点観測」シリーズです。統計の最新値が公表されるたびに、同じURLで更新します(最終更新:2026年7月)
グラフ①:情報サービス業倒産の推移——リーマン期の水準を再び視界に
「情報サービス業」倒産の件数(年間)
2007年〜2025年(暦年・件)|東京商工リサーチ(ソフトウェア開発・受託開発・HP制作等/負債1,000万円以上)
→ リーマン期に330件超だった倒産は2021年に137件まで沈み、そこから4年連続で増えて2025年は276件に戻った
400件300件200件100件0 リーマン期(〜333件) 137件(底) 276件 4年連続増 2007201020132016201920222025 「情報サービス業」倒産(年間・件)

情報サービス業とは、受託ソフトウェア開発やシステム保守、ホームページ制作などを担うIT企業群を指す。その倒産は、リーマン・ショック前後の2008〜2010年に年330件超のピークを付けたあと長く減少し、コロナ禍の資金繰り支援が効いた2021年に137件まで沈んだ。ところがそこが底だった。2022年145件、2023年229件、2024年261件、2025年276件4年連続で増加し、いまやリーマン期の水準を再び視界に捉えつつある。人手不足やDX投資でIT業界は活況と言われるなかで、なぜ倒産だけが逆行するのか。次のグラフで、底からの反転を切り取る。

グラフ②:2021年の底からの反転——4年で約2倍
情報サービス業倒産のズームイン(2020年〜2025年)
2020年〜2025年(暦年・件/縦軸はグラフ①と同じ0〜400件)|同一集計・全国
→ 2021年の137件を底に、2023年から一段と加速。4年で139件増え、約2倍になった
底(2021) 400件300件200件100件0 171件 137件 145件 229件 261件 276件 底の137件から4年で +139件(約2倍) 202020212022202320242025 縦軸はグラフ①と同じ0〜400件 「情報サービス業」倒産(年間・件)

コロナ禍の資金繰り支援(実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」など)が倒産を抑え込んだ2021年、情報サービス業の倒産は137件と集計上の底を付けた。だが2022年145件でわずかに反発すると、2023年には229件へ一気に跳ね上がる。以降も261件(2024年)、276件(2025年)と伸び、底からの4年間で139件・約2倍に膨らんだ。しかも2026年に入っても勢いは衰えず、上半期だけで166件と2017年以降の同期で最多を記録している。単なるコロナ反動では説明しきれない増え方だ。背景には何があるのか。

なぜIT業界で倒産が増えるのか——AI・内製化が下請け構造を侵食

東京商工リサーチは要因として、ノーコード・ローコード開発ツールや生成AIの普及を挙げる。以前は外注していた簡易なホームページ制作やコンテンツ作成、小規模なシステム開発を、発注側が自社内で完結できるようになり、価格競争に依存してきた小・零細の受託事業者ほど受注を失いやすい。実際、2026年上半期の倒産166件のうち、負債1億円未満が88.5%、従業員5人未満が81.3%を占め、淘汰は明確に零細層へ集中している。IT技術の進歩そのものが、IT企業の一部を退出させるという逆説が起きている。

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グラフ③:全国の倒産と比べる——回復ペースはIT業界のほうが速い
2021年(底)=100とした倒産件数の推移(情報サービス業 vs 全国全業種)
2021年〜2025年(暦年・2021年=100の指数)|いずれも東京商工リサーチ。母数は異なる(全国=全業種/情報サービス業=その一部)が同一集計
→ 底の2021年を100とすると、2025年は情報サービス業201・全国全業種171。IT業界の倒産は全国平均より速く増えている
200180160140120100 2021年(各系列の底)=100 情報サービス業 201 全国全業種 171 2023年以降、差が開く 20212022202320242025 情報サービス業(一部業種) 全国全業種 2021年の倒産件数を各系列100とした指数(情報サービス業137件/全国全業種6,030件を基準)

情報サービス業の倒産だけが特殊なのか。倒産全体(全業種)と並べて比べると、答えは半分イエスだ。ゼロゼロ融資の効果で全国の倒産も2021年に底を打ち、その後は同じように増えている。しかし2021年の底を100とした指数で見ると、2022年はほぼ横並びだったのに、2023年から差が開き始める。2025年時点で全国全業種が171(6,030件→10,300件)まで戻ったのに対し、情報サービス業は201(137件→276件)に達した。IT業界の倒産は、全国平均より速いペースで増えている。景気の追い風というより、業界固有の構造変化が働いていることを示している。

このグラフの正しい読み方——「IT=安泰」の裏で起きていること

2つの系列はいずれも東京商工リサーチの倒産集計(負債1,000万円以上)だが、全国全業種はすべての産業を含む母集団、情報サービス業はそのごく一部の業種であり、規模がまったく異なる。そのままの件数では比較しづらいため、底の2021年を100とする指数で回復(増加)ペースを揃えた。読み取れるのは「IT業界だから倒産が少ない」という通念とは逆の姿だ。ただし退出のかたちは倒産だけではない。2025年の情報サービス業は倒産276件に対し、休廃業・解散が3,014件(前年比+20.8%)に上る。多くの受託事業者は、倒れる前に静かに看板を下ろしている。

「情報サービス業」倒産の件数の推移(年間・上半期/2007〜2026年・単位:件)
年間1〜6月(上半期)
2007230109
2008330149
2009315156
2010333172
2011321169
2012323182
2013303156
2014239135
2015228116
201619891
2017212119
2018222116
2019239112
202017187
202113767
202214570
2023229101
2024261120
2025276140
2026166
出典:東京商工リサーチ「2026年上半期『情報サービス業』倒産 166件 過去10年で最多」(2026年7月公表)の件数推移チャートより。対象は受託ソフトウェア開発・システム保守・HP制作等を含む情報サービス業の倒産(法的・私的/負債1,000万円以上)。2021年(年間137件・上半期67件)が集計上の底、2026年上半期166件は2017年以降の同期で最多。グラフ③の全国全業種は同社「全国企業倒産状況」(2021年6,030件→2025年10,300件)を2021年=100として指数化したもの。
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2026年——上半期166件。通年はリーマン期の水準に迫るか。

2026年上半期の166件は、前年同期(140件)を18.6%上回るペースだ。このまま推移すれば通年は330件前後と、リーマン・ショック直後(2008年330件)に並ぶ水準が視野に入る。観測点は2つ。生成AIの業務実装がさらに進むなかで、単価競争に依存する小・零細の受託が持ちこたえられるか。そして、倒産に至らず休廃業を選ぶ「静かな退出」がどこまで広がるか。IT業界の内部で起きている構造転換は、発注する側の企業にとっても、外注先の選定・与信を見直す論点になる。次回の年間確定値(例年1月公表)が答え合わせになる。

このデータをプレゼンで使うには
ターゲット:IT・受託開発企業の経営/発注側の情報システム・購買部門/金融機関・与信管理
SCENE 01|IT受託企業の経営会議
「売り手市場」の裏にある淘汰を直視する
「情報サービス業の倒産は2021年の137件を底に4年連続で増え、2025年は276件、2026年上半期は166件と2017年以降で最多です。淘汰は負債1億円未満・従業員5人未満の零細層に集中しています。価格競争型の受託から、内製化・AIでは代替しにくい上流や専門領域へ、事業構造の転換を急ぐ局面です。」
SCENE 02|発注側の情報システム・購買部門
外注先の与信・継続性リスクを共有する
「IT業界は活況というイメージがありますが、受託中心の情報サービス業の倒産は全国平均より速いペースで増えています(2021年比で情報サービス業201・全国171)。小規模ベンダーへの発注は、開発途中での事業停止リスクを織り込み、継続性の確認を要件に加えるべきです。」
SCENE 03|金融機関・中小企業支援
「IT=成長分野」という与信の前提を更新する
「情報サービス業でも、退出は倒産276件に対し休廃業・解散が3,014件と静かな廃業が主流です(2025年)。ノーコード・生成AIによる内製化が価格競争型の下請けを侵食しています。IT業種という一括りではなく、収益源が受託の単価に依存していないかで見極める必要があります。」
生成AIでグラフを生成する
ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeなどに下のプロンプトをそのまま貼り付けるだけで、同じ推移グラフが自動で生成されます。
以下のデータをもとに、年間件数の折れ線グラフを作成してください。 【データ】(単位:件) 年, 情報サービス業倒産(年間) 2007, 230 2008, 330 2009, 315
… (2007〜2026年の年間・上半期の全データ・全国全業種との指数比較・グラフ仕様・出典・注記を含む全文)

※出典:東京商工リサーチ「2026年上半期『情報サービス業』倒産 166件 過去10年で最多 小・零細規模の淘汰が加速へ」(2026年7月公表)。対象はソフトウェア開発・受託開発・システム保守・ホームページ制作等を手がける情報サービス業の倒産(法的・私的整理/負債1,000万円以上)。年間倒産件数は2021年137件(集計上の底)→2025年276件(4年で約2.0倍)、2026年上半期は166件で2017年以降の同期で最多。2026年上半期の内訳は負債1億円未満88.5%・従業員5人未満81.3%・資本金1千万円未満107件。参考として2025年の情報サービス業は倒産276件に加え休廃業・解散が3,014件(退出計3,290件・前年比+20.8%)。グラフ③の全国全業種は同社「全国企業倒産状況」の暦年確定値(2021年6,030件→2025年10,300件・負債1,000万円以上)を2021年=100として指数化したもので、両系列は母数(対象業種の範囲)が異なる同一機関の別集計であり、単純な件数比較ではなく増加ペースの比較として提示している。

📎 引用・転載について

本記事のグラフ・数値・データ表は、出典として本記事へのリンク(「出典:DataSlide」+記事URL)を明記いただければ、ブログ・資料・SNS等で自由に転載いただけます。事前連絡は不要です。

よくある質問
情報サービス業の倒産は2025年に何件でしたか?
東京商工リサーチの集計によると、2025年の情報サービス業(受託ソフトウェア開発・システム保守・HP制作等)の倒産は276件でした。2021年の137件を底に4年連続で増加しており、2026年に入っても勢いは衰えず、上半期だけで166件と2017年以降の同期で最多を記録しています。いずれも負債総額1,000万円以上の倒産(法的・私的整理)が対象です。
なぜIT業界で倒産が増えているのですか?
東京商工リサーチは、ノーコード・ローコード開発ツールや生成AIの普及を要因に挙げています。以前は外注していた簡易なホームページ制作やコンテンツ作成、小規模なシステム開発を発注側が自社内で完結できるようになり、価格競争に依存してきた小・零細の受託事業者ほど受注を失いやすくなっています。実際、2026年上半期の倒産166件のうち、負債1億円未満が88.5%、従業員5人未満が81.3%を占めます。
情報サービス業の倒産は全国平均より速く増えているのですか?
はい、増加ペースは全国平均を上回ります。倒産全体が底を打った2021年を100とした指数で比べると、2025年時点で全国全業種が171(6,030件→10,300件)なのに対し、情報サービス業は201(137件→276件)に達しました。ただし全国全業種はすべての産業を含む母集団、情報サービス業はその一部の業種であり、規模が異なるため件数そのものではなく増加ペースの比較です。
グラフ作成プロンプト
プロンプト(そのまま生成AIに貼り付けてください)
グラフ画像
グラフプレビュー
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