特殊詐欺の前触れである「予兆電話(アポ電)」は、2020年の98,472件から2025年は331,653件へと5年で約3.4倍に増えた(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」)。1日あたり約900本。実際に警察が認知した特殊詐欺27,832件の約12倍にのぼる。被害が表に出るより前の、かかってくる電話そのものが急増している。
調査概要
「予兆電話」とは、警察が把握した、住所・氏名・資産・利用金融機関などを探る、特殊詐欺が疑われる電話をさす。いわゆる「アポ電」だ。この件数が、2020年の98,472件から2025年には331,653件——5年で約3.4倍になった。1日あたりに直すと約900本のアポ電が全国で把握されている計算になる。
推移の形にも特徴がある。2020年から2023年までは10万〜13万件の緩やかな増加だったが、2024年に19万件、2025年に33万件と直近2年で一気に跳ね上がった。次のグラフで、この急変を切り取って見る。
直近を切り出すと、増加の速さがより鮮明になる。2023年の131,868件が、2024年に193,475件(+46.7%)、2025年に331,653件(+71.4%・+13.8万件)と、2年連続で二桁の伸び率を記録した。警察庁はこのアポ電の急増が、令和7年に認知件数・被害総額が著しく増加した主たる背景のひとつだとしている。
つまり、被害が増えたのは「たまたま」ではない。その手前で、詐欺グループが電話をかける量そのものが急拡大している。次のグラフで、この前ぶれの電話が実際の詐欺件数と比べてどれだけ速く増えているのかを見る。
予兆電話件数は、実際に被害が発生した件数ではなく、警察が把握した「特殊詐欺が疑われる電話」の件数である。被害の一歩手前、いわば詐欺の”入口”の広さを表す指標といえる。件数は同一の定義で6年続く系列のため、水準そのものより推移の勢いを読むのに適している。なお2025年の予兆電話は1か月あたり平均27,638件で、都道府県別では東京都51,649件が最多だった。
両者を2020年=100の指数でそろえると、増え方の差がはっきりする。実際に警察が認知した特殊詐欺は5年で指数205(約2.1倍)まで増えた。それも大きな伸びだが、予兆電話は指数337(約3.4倍)と、かかってくる電話のほうが、実際の被害よりおよそ1.6倍のペースで増えている。
言い換えると、特殊詐欺1件を認知するまでにかかった予兆電話は、2020年の約7本から2025年には約12本へと増えた。空振りを織り込んで、とにかく数をかける——詐欺のかけ方が「狙いを定めて」から「手当たり次第」へ変わっていることが、2つの線の開き方に表れている。
予兆電話と認知件数は同じ資料の別々の指標であり、予兆電話の1本1本が必ず被害につながるわけではない。むしろ大半は被害に至らない。だからこそ「1件の詐欺の裏に約12本の電話」という比の広がりは、詐欺グループがより多くの相手に無差別に電話をかけ、資産や家族構成を探る”下見”を大量に行っていることを示す。着信に出ない・折り返さない・家族と合言葉を決めておく、といった入口での防御が、これまで以上に効いてくる局面だといえる。
| 年 | 予兆電話(件) | 特殊詐欺 認知件数(件) | 1件あたり予兆電話(本) |
|---|---|---|---|
| 2020(R2) | 98,472 | 13,550 | 7.3 |
| 2021(R3) | 100,515 | 14,498 | 6.9 |
| 2022(R4) | 120,444 | 17,570 | 6.9 |
| 2023(R5) | 131,868 | 19,038 | 6.9 |
| 2024(R6) | 193,475 | 21,043 | 9.2 |
| 2025(R7) | 331,653 | 27,832 | 11.9 |
出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日公表)。予兆電話・認知件数はいずれも同資料に掲載された確定値。「1件あたり予兆電話」は予兆電話件数÷認知件数で編集部が算出した参考値。特殊詐欺の被害総額は2025年で1,423.1億円(前年比+98.0%)。
予兆電話は2020年から一度も減っておらず、直近2年は年+46.7%・+71.4%と加速している。次回・令和8年分の確定値(2027年前半の公表見込み)で見るべき観測点は2つ。予兆電話が33万件からさらに伸びるのか、そして「1件あたり約12本」という電話の多さが頭打ちになるのか下がるのか——を定点で追う。入口が広がり続ける限り、着信の段階で断つ備えの重要性は増していく。
※出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日公表)。予兆電話とは、警察が把握した、電話の相手方に対して住所・氏名・資産・利用金融機関等を探るなどの特殊詐欺が疑われる電話をさす。予兆電話・認知件数はいずれも同資料の確定値(予兆電話は令和2〜7年、認知件数は令和2〜7年)。「1件あたり予兆電話(本)」および指数(2020年=100)は、公表された両数値をもとに編集部が算出した参考値であり、原資料には記載されていない。予兆電話1本ごとが被害につながることを示すものではない。
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