二人以上の世帯が1年間に米に使った金額は、2022年の19,825円から2025年は42,739円へ、3年で2.16倍になった(総務省「家計調査」)。2000年以降の26年間で最も高い。同じ2025年のパンは34,244円で、2014年から11年続いていた「パンのほうが米より高い」状態が終わった。ただし買った量は61.31kgで、2020年の64.53kgより少ない。増えたのは量ではなく1kgあたりの値段である。
調査概要
家計調査は、家計簿をつけてもらう方式で品目ごとの支出額を集計している。二人以上の世帯が1年間に米へ使った金額は、2000年の40,256円から下がり続け、2022年には19,825円まで落ちた。22年でほぼ半分である。ところがそこから流れが変わり、2023年20,397円、2024年27,196円、そして2025年は42,739円。3年で2.16倍、金額にして22,914円の増加となった。
2025年の42,739円は、2000年の40,256円を上回り、この26年間で最も高い。ただしこれは「日本人が米を食べるようになった」という話とは限らない。次のグラフで、増えたのが量なのか値段なのかを分けて見る。
家計調査は支出額だけでなく、買った量と1kgあたりの平均価格も同時に集計している。2023年から2025年にかけて、購入数量は56.65kgから61.31kgへ1.08倍にしかなっていない。一方で平均価格は360.03円から697.12円へ1.94倍である。
2年間で増えた22,342円を分けると、価格が上がったことによる増加が約19,100円で、増加分のおよそ85%を占める。量が増えたことによる増加は約1,700円にとどまる。米の支出が26年ぶりの高値になったのは、たくさん買うようになったからではない。
家計調査でとらえた米の平均価格は、2023年に1kgあたり360円だった。それが2024年に452円、2025年には697円になっている。5kgの袋に置き換えると、1,800円だったものが3,500円近くになった計算である。買う量の変化は1年で1kg前後にすぎず、価格の動きに比べればごく小さい。米は毎日食べるものであり、値段が上がってもすぐには買う量を減らしにくい。その結果、値上がりがほぼそのまま支出額の増加として家計に現れた。なお家計調査の平均価格は、家計簿に記録された支出額と数量から算出される実際の購入価格であり、銘柄や購入先の違いも含んだ平均である。
2本の線を重ねると、この26年の構図が見える。パンは2000年の27,512円から2025年の34,244円までゆるやかに増え続けた。米は下がり続けた。両者は2011年に初めて入れ替わり(米27,425円・パン28,321円)、2012年と2013年はわずかな差で米が上に戻り、2014年から2024年までの11年間はパンが上という状態が続いた。
それが2025年に、8,495円の差をつけて米が上に戻った。ただし、これはパンが減ったからではない。パンは34,244円で、前年からの減少は365円にすぎない。動いたのは米の値段だけである。麺類も22,048円と26年で最も高く、穀類全体では105,698円と前年から18.7%増えた。
これは支出額の推移であり、食べた量の推移ではない。値段が上がれば、同じ量を買っても支出額は増える。実際、米の購入数量は2025年で61.31kgと、2020年の64.53kgより少ない。「米がパンを抜き返した」という見出しから受ける印象と、家計の実態は同じではない。もうひとつ、家計調査の旧表(2007年まで・二人以上の非農林漁家世帯が対象)を確認すると、統計が始まった1963年から2007年まで、米への支出がパンを下回った年は一度もない。1963年は米37,609円に対しパン3,855円で、およそ10倍の開きがあった。母数がわずかに異なるため単純な接続はできないが、2011年の逆転は家計調査の長い歴史のなかで初めて起きたことだったといえる。
| 年 | 米(円) | パン(円) | 麺類(円) | 米の購入数量 (kg) | 米の平均価格 (円/kg) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2000 | 40,256 | 27,512 | 18,771 | — | — |
| 2001 | 38,293 | 26,358 | 18,373 | — | — |
| 2002 | 36,593 | 26,750 | 18,389 | — | — |
| 2003 | 37,256 | 27,189 | 18,165 | — | — |
| 2004 | 37,294 | 27,610 | 18,053 | — | — |
| 2005 | 32,896 | 26,253 | 16,662 | — | — |
| 2006 | 30,967 | 26,559 | 16,292 | — | — |
| 2007 | 30,679 | 27,096 | 16,414 | — | — |
| 2008 | 31,230 | 28,220 | 17,985 | — | — |
| 2009 | 30,495 | 28,964 | 18,423 | — | — |
| 2010 | 28,610 | 28,177 | 18,047 | — | — |
| 2011 | 27,425 | 28,321 | 18,236 | — | — |
| 2012 | 28,731 | 28,282 | 17,563 | — | — |
| 2013 | 28,093 | 27,974 | 17,170 | — | — |
| 2014 | 25,108 | 29,210 | 17,295 | — | — |
| 2015 | 22,981 | 30,507 | 17,747 | — | — |
| 2016 | 23,522 | 30,294 | 17,606 | — | — |
| 2017 | 23,681 | 29,957 | 17,300 | — | — |
| 2018 | 24,314 | 30,554 | 17,368 | — | — |
| 2019 | 23,212 | 32,164 | 17,713 | — | — |
| 2020 | 23,920 | 31,456 | 20,602 | 64.53 | 370.71 |
| 2021 | 21,862 | 31,353 | 19,676 | — | — |
| 2022 | 19,825 | 32,497 | 20,112 | — | — |
| 2023 | 20,397 | 33,874 | 20,672 | 56.65 | 360.03 |
| 2024 | 27,196 | 34,609 | 21,214 | 60.20 | 451.76 |
| 2025 | 42,739 | 34,244 | 22,048 | 61.31 | 697.12 |
出典:総務省「家計調査」。支出額は長期時系列表「品目分類(小分類まで):支出金額(2000年〜)」(二人以上の世帯・2025年分は2026年2月公表)による。購入数量と平均価格は各年の家計収支編 第4-1表「都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり支出金額,購入数量及び平均価格」の全国値による(当欄は2020年・2023年・2024年・2025年の4か年を確認したもので、空欄は未確認を意味する)。倍率・増減・寄与の分解は公表値をもとに編集部が算出した。家計調査は2018年1月に家計簿の様式改正があり、長期の増減を厳密に比較する場合は総務省が公表する変動調整値の参照が必要となる。
26年ぶりに米への支出が最高になった年は、同時に「買う量は増えていない年」でもあった。2000年の支出額40,256円と2025年の42,739円はほぼ同じ水準だが、参考として旧表(二人以上の非農林漁家世帯)を見ると2000年の購入数量は100.4kgである。母数がわずかに異なるため単純な比較はできないものの、支出額が同じ水準に戻る一方で、買う量はおよそ4割少なくなっている。次に見るべき観測点は3つ。2026年の平均価格が697円から下がるのか、それとも高い水準で落ち着くのか。価格が下がったとき、購入数量が戻るのか戻らないのか。そして、11年ぶりに入れ替わった米とパンの順位が定着するのか、1年限りで終わるのかである。2026年分の家計調査年報は2027年2月ごろの公表が見込まれる。
※出典:総務省「家計調査」。支出額の26年系列は長期時系列表「品目分類(小分類まで):支出金額(2000年〜)」(二人以上の世帯)、購入数量・平均価格は各年の家計収支編 第4-1表の全国値による。二人以上の世帯には農林漁家世帯を含む。本文中で参考として触れた1963〜2007年の数値は、旧表「1世帯当たり年間の品目別支出金額及び購入数量(1963年〜2007年)」によるもので、対象が二人以上の非農林漁家世帯であり2000年以降の系列とは母数が異なる(2000年の米への支出は旧表40,846円・現行表40,256円)。家計調査は2018年1月に家計簿の様式改正があり、長期比較には総務省公表の変動調整値の参照が必要となる。金額は名目値であり、物価変動の調整は行っていない。倍率・増減・価格要因と数量要因の分解は公表値をもとに編集部が算出した。
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