インターネットバンキングの不正送金被害額は2025年に約104億円と過去最高を更新。2020年の11.3億円から6年で約9倍に拡大した(警察庁)。フィッシング報告件数も245万件と過去最多である。
調査概要
インターネットバンキングを悪用した不正送金の被害額は、2020年から2025年の6年間で約9倍(11.3億円→104億円)に拡大した。とりわけ2023年が大きな転換点で、前年15.2億円から前年比5.7倍の87.3億円へと急騰した。その後も被害は高水準を維持し、2025年は過去最高の104億円を記録している。
この被害額にはフィッシング・マルウェア・不正アプリなど複数の手口が含まれる。2023年に何が変わったのか——次のグラフで急変点を見ていく。
2021年から2022年にかけて被害額は低水準が続いていた。しかし2023年、被害額が前年比5.7倍に急騰した。SMSを使ったフィッシング(スミッシング)の急拡大、ワンタイムパスワードを突破するリアルタイム型攻撃ツールの普及、東南アジア等を拠点とした犯罪グループの組織化が重なった年とされている。
攻撃の「量」ではなく「質」が変わった年だったといえる。2024年は横ばいとなったが、2025年は再び最高値の104億円を更新した。
SMSフィッシングの爆発的拡大・OTP突破ツールの普及・犯罪組織の高度化が同時に進行した。「量」と「質」の両面が変化したことが、2022年→2023年の5.7倍という数字の背景にある。
別統計からの補足:以下は出典の異なるデータ(フィッシング対策協議会)と不正送金被害額(警察庁)の2軸比較。直接の因果を示すものではなく、オンライン詐欺全体の傾向を複数の視点から捉えるための参考として提示する。
フィッシング件数は6年間を通じて右肩上がりで増加し続けているのに対し、不正送金被害額は2023年に突出して急騰した後、高水準で推移している。2本の線は必ずしも連動していない。
この2つは出典が異なる別々の統計であり、直接の因果関係を示すものではない。ただし異なる機関の異なるデータがどちらも深刻化の傾向を示しているという事実は、オンライン詐欺全体のリスクを複数の視点から裏付けている。
左軸(フィッシング件数)は「攻撃活動量の指標」、右軸(不正送金被害額)は「実際の金銭被害」。2本の線が連動しない年があることは、被害額の増減には件数以外の要因——攻撃手法の高度化・金融機関の対策・犯罪組織の動向——が大きく影響していることを示している。
| 年 | 不正送金被害額(警察庁) | フィッシング報告件数(フィッシング対策協議会) |
|---|---|---|
| 2020年 | 11.3億円 | 22万件 |
| 2021年 | 8.2億円 | 53万件 |
| 2022年 | 15.2億円 | 97万件 |
| 2023年 | 87.3億円 | 120万件 |
| 2024年 | 86.9億円 | 172万件 |
| 2025年 | 104億円 | 245万件 |
※2つの統計は出典が異なり、直接の因果関係を示すものではない。
2023年に急騰した被害額は2024年も高止まりし、2025年にさらに更新された。フィッシング件数も年々増加している。金融機関のセキュリティ強化や警察庁の集中取締りが一定の効果を上げている一方で、攻撃側の手口も進化し続けている。この数字を「他人事」ととらえる余裕は、すでにない段階に来ているといえるだろう。
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