ドラッグストアの商品販売額は2025年に9兆4,129億円となり、12年前の2014年(4兆9,375億円)の1.9倍になった(経済産業省「商業動態統計」)。同じ2025年の百貨店は6兆2,124億円で、ドラッグストアはその1.5倍にあたる。百貨店の売上規模を追い越したのは、ネット通販でもコンビニでもなく、街のドラッグストアだった。しかも売上の中身を見ると、いちばん大きい品目は薬ではなく食品で、2025年の食品3兆2,081億円は、調剤薬とOTC薬を合わせた2兆182億円の1.6倍である。
調査概要
商業動態統計は、経済産業省が毎月、小売・卸売の販売額を業態ごとに調べている統計である。ドラッグストアの商品販売額は、2014年の4兆9,375億円から2025年の9兆4,129億円へ、12年で1.9倍になった。増えた額は4兆4,754億円で、これは2025年の百貨店の売上(6兆2,124億円)の7割にあたる規模である。
伸びはほぼ一本調子だが、途中で一度だけ足を止めている。2020年は前年比6.6%増だったのに対し、2021年は0.3%増と、この12年でもっとも小さい伸びだった。店舗数も2014年の13,069店から2025年の20,373店へ7,304店増えており、1店あたりの販売額も3億7,800万円から4億6,200万円へ22.3%増えている。店が増え、1店あたりも売れている。では、その売上をつくっているのは何なのか。次のグラフで中身を分解する。
ドラッグストアの品目別に見ると、いちばん大きいのは食品である。2014年の1兆2,065億円から2025年の3兆2,081億円へ2.7倍になり、売上に占める割合も24.4%から34.1%へ上がった。一方、調剤医薬品とOTC医薬品を合わせた「薬」は1兆818億円から2兆182億円へ1.9倍で、割合は21.9%から21.4%とほぼ横ばいである。12年間で増えた4兆4,754億円のうち、食品が2兆16億円(45%)を占めた。
薬が伸びていないわけではない。とくに調剤医薬品は3,451億円から9,781億円へ2.8倍になっており、処方箋を受け付ける店が増えたことがわかる。それでも食品の伸びのほうが大きく、両者の差は2014年の1.1倍から2025年には1.6倍に開いた。化粧品(ビューティケア)はコロナ禍の2020年に前年比10.4%減と落ち込み、そこから回復して2025年は1兆2,399億円と最高になっている。ドラッグストアは、薬を売る店から食品も日用品も薬も買える店へと中身を入れ替えてきた。
ドラッグストアの食品は、もともと粗利の高い医薬品・化粧品で利益を確保し、食品を安く売って来店頻度を上げるという売り方から広がったとされる。週に一度のスーパーではなく、数日おきに立ち寄る店として定着すれば、ついでに日用品や医薬品も買われる。さらに調剤併設店が増えたことで、処方箋を持って来る人が食品も買って帰る流れができた。店舗数は12年で7,304店増え、住宅地や駅前の生活動線に入り込んだ。一方の百貨店は店舗の統廃合が続き、地方都市では閉店が相次いだ。売り場が近づいた業態と、売り場が遠のいた業態の差が、そのまま販売額の差になっている。
同じ統計の中で百貨店と並べると、位置関係の変化がはっきりする。2014年のドラッグストアは百貨店の0.72倍にすぎなかった。差は年々縮まり、2018年には百貨店6兆4,434億円に対しドラッグストア6兆3,644億円とほぼ横並びになる。翌2019年にドラッグストアが6兆8,356億円と上回り、順位が入れ替わった。
決定的だったのは2020年である。百貨店は前年比25.5%減の4兆6,938億円まで落ち、ドラッグストアは6.6%増の7兆2,841億円と伸びた。百貨店はその後4年かけて6兆2,124億円まで戻したが、これは2019年の98.6%で、6年たってもコロナ前の水準に届いていない。2025年の両者の差は3兆2,004億円、比率にして1.5倍である。百貨店を追い抜いたのはネット通販でもコンビニでもなく、日々の買い物のついでに寄る店だった。
これは業態ごとの販売額の比較であり、店舗数も客層も違う業態を同じ物差しで並べたものである。百貨店は1店あたりの売上が大きく店舗数が少ない業態、ドラッグストアは1店あたりが小さく2万店を超える業態で、性格はまったく異なる。また、この統計は業態別の売上を集計したものなので、ネット通販での購入は含まれない(百貨店・ドラッグストアが自社サイトで売った分は各業態に計上される)。「百貨店の落ち込み=ドラッグストアへ客が移った」という単純な移動を示すものでもない。それでも、同じ統計・同じ単位で並べたときに順位が入れ替わり、差が1.5倍まで開いたという事実は、消費の受け皿がどこへ移ったかを示している。なお2025年の販売額はスーパー16兆8,026億円、コンビニ13兆3,212億円が上位で、ドラッグストアはその次にいる。
| 年 | ドラッグストア(百万円) | 百貨店(百万円) | うち食品(百万円) | うち薬(百万円) | ドラッグストア÷百貨店 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014 | 4,937,496 | 6,827,373 | 1,206,513 | 1,081,764 | 0.72 |
| 2015 | 5,360,899 | 6,825,769 | 1,339,365 | 1,155,430 | 0.79 |
| 2016 | 5,725,801 | 6,597,620 | 1,491,466 | 1,204,768 | 0.87 |
| 2017 | 6,057,971 | 6,552,855 | 1,620,640 | 1,252,853 | 0.92 |
| 2018 | 6,364,419 | 6,443,416 | 1,806,148 | 1,270,119 | 0.99 |
| 2019 | 6,835,625 | 6,297,864 | 1,942,024 | 1,452,682 | 1.09 |
| 2020 | 7,284,078 | 4,693,751 | 2,183,409 | 1,486,106 | 1.55 |
| 2021 | 7,306,578 | 4,902,989 | 2,233,844 | 1,497,358 | 1.49 |
| 2022 | 7,708,656 | 5,507,040 | 2,392,122 | 1,629,651 | 1.40 |
| 2023 | 8,343,843 | 5,955,707 | 2,687,086 | 1,786,089 | 1.40 |
| 2024 | 8,919,948 | 6,328,207 | 2,939,743 | 1,900,650 | 1.41 |
| 2025 | 9,412,899 | 6,212,441 | 3,208,073 | 2,018,189 | 1.52 |
出典:経済産業省「商業動態統計」時系列データ(2026年7月15日更新)。ドラッグストアは「ドラッグストア商品別販売額等」、百貨店は「百貨店・スーパー商品別販売額(2)百貨店」による暦年(1〜12月)の商品販売額。「薬」は調剤医薬品とOTC医薬品の合計(編集部が算出)。ドラッグストアは年間補正により2015年・2017年・2018年・2019年の各1月にリンク係数が設定されており、2018年以前と2019年以降は厳密には接続しない(前年比の公表値はリンク係数で調整済み)。百貨店の実額は1993年以降が連続している。倍率・構成比・増加額は公表値をもとに編集部が算出した。
ドラッグストアは12年連続で販売額を伸ばし、店舗数も20,373店まで増えた。ただし増えているのは薬ではなく食品であり、その先にいるのはスーパーとコンビニである。2025年のコンビニは13兆3,212億円で、ドラッグストアはその71%まで近づいた。次に見るべき観測点は3つ。食品の構成比が35%を超えるのか。調剤併設が進んで薬の比率が再び上がるのか。そして、コロナ前の98.6%で足踏みする百貨店が2019年の水準を取り戻せるのかである。2026年の年計は2027年3月ごろの確報公表が見込まれる。
※出典:経済産業省「商業動態統計」時系列データ(最終更新2026年7月15日)。数値は暦年(1〜12月)の商品販売額で、単位は百万円。2025年の値は年計の確報だが、直近年は年間補正により変更されることがある。「薬」は調剤医薬品とOTC医薬品の合計で、原典に同名の集計欄はなく編集部が合算した。ドラッグストアは調査対象企業の見直し・訂正にともない2015年・2017年・2018年・2019年の各1月にリンク係数が設定されており、2018年以前と2019年以降の実額は厳密には接続しない(2018年を2019年の基準にそろえると、百貨店とはこの年にほぼ同水準となる)。百貨店は1991年7月・1994年7月に不連続があり、実額の連続した比較は1993年以降で行っている。同じスーパーの実額は2010年以降に複数回の不連続があるため、本記事では推移に使用していない(2025年単年の参考値としてのみ記載)。倍率・構成比・増加額・1店あたり販売額は公表値をもとに編集部が算出した。
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